今回ご紹介するのは、ヨーロッパを起点として世界に製品を供給している企業の日本法人の事例です。日本の企業にはない独自の企画力と技術面でのクオリティが強みですが、リスティング広告を行っていたものの、成果が出ていない状況でした。
そこでリスティング広告を見直し、LPの修正、キーワードの絞り込みを行った結果、CVを3.6倍に、検索クリック数を4倍に上げることができました。リスティング広告からの WEB集客の考え方、施策のポイントをぜひ参考にしてください。
リスティング広告で成功するには、どのようなゴールを目指しているのかを明確にする必要があります。その上で目的を達成するための全体戦略を練ることが大切です。全体戦略を立てる際の具体的方法について、3つのステップに分けて説明します。
STEP1リスティング広告の特長を押さえる
リスティング広告の特徴を理解していなければ、効果的な戦略を立てることはできません。リスティング広告の主な特徴として、次の5つが挙げられます。それぞれ押さえておきましょう。
①ニーズの高いユーザーにアプローチできる
リスティング広告は、検索意図を持っているユーザーにアプローチする広告です。つまり顕在ニーズの高い顧客に広告が配信されるため、購買確率の高い「今すぐ客」にアピールできます。広告運用の成果を高めるには、キーワードの選定が重要になります。一方で、購入欲求はあるものの、ニーズが低い潜在顧客にはリスティング広告よりもディスプレイ広告が適しています。
②短期間で成果が見込める
自身のニーズを理解する顕在顧客にリーチできるため、短期間での成果が期待できるのもリスティング広告ならではです。一般的にSEO対策は時間がかかる場合が多いため、短期間での成果を見込める施策として導入しやすい広告でもあります。広告配信の開始・停止が簡単にできるのもメリットです。
③掲載順位は「入札単価×広告の品質」で決まる
リスティング広告の掲載枠は画面上部に4つ、下部に3つとなっています。クリック単価を高く設定した広告主が掲載枠を獲得できるシステムです。加えて広告の品質自体をさまざまな指標で評価した品質スコア(品質インデックス)が設定されています。広告の品質を上げて費用対効果を高めることが可能になってくるのです。より詳しい掲載順位の決定方法については、「Yahoo!広告ヘルプ」、「Google広告ヘルプ」の記載をご覧ください。
④課金方式はクリック課金方式
リスティング広告の課金方式はクリック単価方式です。CPCと呼ばれ、クリックされた回数に応じて広告費用を支払うやり方です。予算下限が決められていないため、1日1,000円~(例:Google)など低予算での広告出稿が可能です。クリック単価は、広告費 ÷ クリック数で計算が可能です。
⑤費用対効果を検証しやすい
リスティング広告はユーザーのクリックで費用が発生するクリック課金方式です。費用対効果を数字で知ることが可能で、非常にわかりやすいのが特徴です。
さらに、効果検証においても4つの指標を基本として改善策を講じることができます。次の4つの指標を分析し、効果を分析します。
- インプレッション数:広告の表示回数。ターゲティングを広げるための指標となる
- クリック数:少ない場合、キーワードやターゲットを見直す
- コンバージョン数(CV):クリックに対し、お問い合わせなどのアクションにつながったかを示す数。広告文やランディングページを改善に役立つ
- クリック単価:広告の品質を見直す指標となる
STEP2自社の強み・ターゲット(ペルソナ)を明確にする
戦略の次のステップは、自社の強み・ターゲット(ペルソナ)を明確にすることです。リスティング広告での成功は、競合他社との差別化にあります。差別化が図れなければ、同じ市場でのパイを奪い合うだけになってしまうからです。自社の強みが明らかになっていれば、広告文での訴求もしやすく、はっきりと差別化することもできます。またリスティング広告の鍵となるキーワード選択には、ターゲット(ペルソナ)の理解が欠かせません。
①自社の強みを分析する
まずは、自社の商材の強み・訴求ポイントを把握しましょう。自社の強みを分析する際には、3C分析、SWOT分析などマーケティングのフレームワークが役立ちます。
3C分析は、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの頭文字を取って名付けられました。3つの「C」の視点を分析し、自社を取り巻く状況を理解します。業界内での競合など外部環境、また内部環境を含めた状況整理に有効なフレームワークとして知られています。3C分析ではあくまで「事実」を収集することに重きを置きます。予測や解釈はSWOT分析で行います。
SWOT分析では、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4要素から自社を分析します。市場機会や事業課題を発見できるフレームワークと言えるでしょう。SWOT分析を行い、自社の置かれている環境を見極め、「戦略目標」を設定します。
②ターゲット(ペルソナ)を明確にする
自社の商品・サービスのターゲットを理解後、あらためてペルソナを設定します。ペルソナとは、顧客の具体的な人物像を指す言葉です。性別や年齢、職業、生活スタイル、悩みなど実在する人物を想定し、細かくかつ具体的に考えることがポイントです。ペルソナの設定により、さらに顧客のニーズを深掘りできるようになります。中でもリスティング広告ではより詳細なターゲットを設定可能です。ペルソナの明確化は、広告のターゲット設定や地域・時間帯の設定にも活用できます。
ペルソナの作り方については、こちらもご参照ください。
マーケティングに必須のペルソナの作り方とは?必要性等の基礎知識と合わせて解説
STEP33つの要素をふまえて戦略を立てる
リスティング広告成功に向けた最終段階では、実際に戦略を立てます。自社の目指すべきゴールはどこにあるのか、そのために必要な全体設計、全体戦略を定めます。全体戦略での方向性を明らかにした後、「部分最適化」の実現を図っていきます。つまり全体戦略を達成するための手段や施策、細かな戦略を考える施策を行うことになります。リスティング広告を3つの要素でとらえ、戦略を立てていきます。
3つの要素の改善で最大化を目指す
リスティング広告は「キーワード」「広告」「リンク先のページ(ランディングページ)」の3つの要素を持っています。3要素がそれぞれ関連し、互いに影響し合っています。そのため3つの視点で改善を図れれば、効果の最大化が期待できるのです。
キーワード設定のポイント
リスティング広告は、検索結果ページに掲載されます。ユーザーの検索するキーワードに連動して掲載されるしくみのため、キーワード選択が重要になってきます。ユーザーの検索意図、抱える悩みなども読み取りながらキーワードを選ぶ必要があります。事前に設定したペルソナの行動を細かく予測し、想定されるキーワードをじっくり考えましょう。
広告作成のポイント
ユーザーがクリックするのは「広告文」、検索結果ページに表示されるテキスト部分です。思わずクリックしたくなるような広告を作成し、アピールしなければなりません。検索キーワードを用いた理由を考えることで、ユーザーのニーズを満たすような広告文を考える必要があります。加えて、自社の強みが伝わるようなテキストにすることも重要です。
リンク先ページ(ランディングページ)作成のポイント
問い合わせなどのCVに結びつけるには、広告クリック後に表示されるランディングページ(LP)の内容に注力することも大切です。見やすさや導線の工夫、利用者の口コミを記載するなどのポイントを押さえたページ作成を行います。またAとBを比較し、より効果的な成果をもたらすかを測定するA/Bテストやより複雑な多変量分析など、効果を測りながら改善を図っていく必要があります。
まとめ
リスティング広告は、ターゲットやキーワードなどに合わせた細かい設定が可能な広告です。
そのメリットをより活用するため、自社の強みとペルソナをもとに絞り込みを行います。さらに「キーワード」「広告」「リンク先のページ(ランディングページ)」の精度の高さがCVに大きく影響します。3つの視点で全体戦略を構築することがリスティング広告を成功に導く鍵となります。
【成功事例】リスティング広告の改善で問い合わせ数が3.6倍にアップ
ここからはリスティング広告の運用実例を挙げ、CVを3.6倍に上げたケースをご紹介します。成功を導くためにどのような課題を見いだし、改善策を講じたのでしょうか。考え方や施策のポイントをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
クライアントは、本社をドイツに置くグローバル企業の日本法人です。扱っているのは家庭用の介護設備で、独自の技術力を誇り、特許も取得しています。ご依頼いただいたときは、リスティング広告を行っていたものの、問い合わせから現地調査・成約につながっていない状況でした。
まずはヒアリングを分析を徹底して行ったところ、次のような課題が明確になりました。
- キーワードにはズレはないが、月によってクリック数の上下が大きい
- ドイツ本社が指定したランディングページを使っており、構成や訴求の言葉が日本のマーケットに合っていない
そこで、まずLPの改善とそれに合わせた広告の作成から対策しました。
- 日本のマーケットに合う 2種類のランディングページを作成し、ABテストを行う
- 新しいランディングページに合わせて、広告文を見直す
これによってクリック数・CV数が安定し、クライアントが求める問い合わせから「現地調査」につながる率が大幅に向上しました。
次の課題は、問い合わせの数を増やすことです。そこで、広告の運用面を見直し、ターゲットに効率よく配信できるように改善しました。行った施策は次のとおりです。
- 「クリック数最大化」から「コンバージョン数最大化」に変更
- 広告の配信地域を営業所のあるエリアに限定
- キーワード以外の類語を詳細に分析し、CVにつながった類語を追加
この施策により、翌月にすぐに効果が出ました。問い合わせ数(フォーム送信のみの問合せ)が22件と倍を記録したのです。
「キーワード」「広告」「リンク先のページ(ランディングページ)」の3つの要素に分けて分析し、課題を見つけて対策を繰り返した結果、確実に成果につながりました。
この事例の詳細はこちらでもご紹介しています。
プロが実践 成功法則から導く運用改善の5つのポイント
前項ではCMSproが行ったリスティング広告の運用の事例を紹介しました。次に運用の改善における5つのポイントを解説します。具体的にポイントをつかんでいただくため、紹介した事例での改善策についても詳しく説明していきます。
POINT1運用の目的・目標を明確化する
リスティング広告の運用を改善するには、目的・目標をあらためて明確にすることが肝要です。目的・目標をどれほど達成できているかを知り、その改善策を考える必要があるためです。先の事例では、問い合わせ(CV)の数という目標と、その先に「現地調査」を増やすという目的がありました。具体的には、目的の「現地調査」につながるLPの見直し、配信地域の設定を行っています。最適な施策を見いだすには、運用の目的は何か、目標の数値はどうかを明確にしなければなりません。
POINT2全体戦略から施策を考える
リスティング広告運用の改善策で大切なのは、まず全体戦略を打ち出すことにあります。個別の施策にとらわれてしまうと、目的の達成からずれてしまう可能性が生じるからです。特に運用においては、クリック数やクリック単価、コンバージョン数など多くの指標を参照します。結果的に数字の改善にこだわることとなり、本来の目的がぼやけてしまいます。
事例でも、指標のクリック単価を意識せず、コンバージョン数を重視する「コンバージョン数最適化」という改善策を活用しました。実際に成果も得ています。全体戦略ありきで個別の施策の判断を行うことを心がけましょう。
POINT3キーワードの最適化を行う
リスティング広告で需要なのは、ターゲットにリーチし、コンバージョンにつながるキーワードを選ぶことです。入札方式を採用しているため、適切なキーワード選びは費用対効果をあげることに大いに関係します。
まず解析データをもとに、クリックされた関連キーワードの中から、除外キーワードと追加キーワードを見つけます。情報収集段階の潜在層向けのキーワードは除外し、新たにターゲットが検索に使っているキーワードを追加することを目指します。
事例では、リーチの幅を増やすために、設定キーワードの類語から新たなキーワードを見つけています。さらに検証を行った上で、キーワードの追加を実施しました。キーワード選定ではデータをふまえて定期的に検証し、最適化を測ることに力を入れましょう。
POINT4広告文・ランディングページの改善を行う
検索表示ページでクリックにつながるのは広告文です。加えてリンク先ページ(ランディングページ)で問い合わせなどのCVには、ページの内容が大いに影響を及ぼします。つまり広告文・ランディングページの検証と改善も、定期的に行うことで効果が得られるというわけです。
例えば追加キーワードを見つけた場合、そのキーワードに合わせて広告文も考える必要があります。
広告文には、ユーザーが調べたいこと、ニーズを踏まえるのが大前提です。その上で、自社のサービスや魅力を端的に伝えるかが鍵となるでしょう。
紹介した事例では、CVアップのために、まずLPと広告文の改善から始めています。ユーザーの行動をイメージして、広告文やランディングページを改善することをおすすめします。
POINT5PDCAサイクルを回し、効果の最大化を目指す
リスティング広告の成功には、定期的な解析データをもとにした分析と改善が不可欠です。分析に基づく効果検証、改善のPDCAサイクルを回していなければなりません。分析から課題を見つけ、キーワードやターゲットの再設定なども行い、さらなる成果アップを目指します。お伝えした事例でも、3つの要素のきめこまかい改善が成果を上げていることが見て取れます。全体戦略をもとに、3つの要素を最適化していき、効果の最大化を実現させましょう。
まとめ
弊社の事例を挙げ、リスティング広告の戦略の立て方や改善を行う流れについて解説しました。CV(コンバージョン)を上げるためには、3つの要素をそれぞれ見つめ直し、課題を見極めなければなりません。3要素のどこを改善すべきかを明らかにし、新たな戦略を立てることが肝要です。さらに定期的に改善を重ねていくことで、大きな成果につながることを念頭に置く必要があるでしょう。
監修者谷口 翔太リンヤ株式会社 代表取締役
2007年「リンヤ株式会社」を創業。WEBマーケティング歴16年。草創期より一貫してWEBマーケティング の専門家として、多くの企業の収益向上に貢献。これまでに手がけた企業は2902社。豊富な経験を活かし、SEO対策を中心とした効果的なWEB施策により集客最大化を図る。HP制作から運用まで顧客企業をトータルでサポートしている。