介護・福祉
リスティング広告の成功事例から学ぶ
戦略の立て方とCVを上げる運用のコツ
検索エンジン(GoogleやYahoo!など)で検索した際、結果ページに掲載されるテキスト型の広告をリスティング広告と言います。自然検索よりも上位に表示できるため、スピーディな集客効果をもたらすメリットがあります。ただし戦略を見誤った結果、費用だけが発生して成果を得られないこともあり得ます。この記事ではリスティング広告を成功に導く戦略の立て方と運用改善のコツを解説します。成功事例もあわせてご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
リスティング広告で成功する戦略の立て方3ステップ
リスティング広告で成功するには、どのようなゴールを目指しているのかを明確にする必要があります。その上で目的を達成するための全体戦略を練ることが大切です。全体戦略を立てる際の具体的方法について、3つのステップに分けて説明します。
STEP1リスティング広告の特長を押さえる
リスティング広告の特徴を理解していなければ、効果的な戦略を立てることはできません。リスティング広告の主な特徴については、次の5つが挙げられます。それぞれ押さえておきましょう。
①ニーズの高いユーザーにアプローチできる 
リスティング広告は、検索意図を持っているユーザーにアプローチする広告です。つまり顕在ニーズの高い顧客に広告が配信されるため、購買確率の高い「今すぐ客」にアピールできます。広告運用の成果を高めるには、キーワードの選定が重要になります。一方で、購入欲求はあるものの、ニーズが低い潜在顧客にはリスティング広告よりもディスプレイ広告が適しています。
②短期間で成果が見込める
自身のニーズを理解する顕在顧客にリーチできるため、短期間での成果が期待できるのもリスティング広告ならではです。一般的にSEO対策は時間がかかる場合が多いため、短期間での成果を見込める施策として導入しやすい広告でもあります。広告配信の開始・停止が簡単にできるのもメリットです。
③掲載順位は「入札単価×広告の品質」で決まる
リスティング広告の掲載枠は画面上部に4つ、下部に3つとなっています。クリック単価を高く設定した広告主が掲載枠を獲得できるシステムです。加えて広告の品質自体をさまざまな指標で評価した品質スコア(品質インデックス)が設定されています。この広告の品質を上げて費用対効果を高めることが可能になってくるのです。より詳しい掲載順位の決定方法については、「Yahoo!広告ヘルプ」、「Google広告ヘルプ」の記載をご覧ください。
④課金方式はクリック課金方式
リスティング広告の課金方式はクリック単価方式です。CPCと呼ばれ、クリックされた回数に応じて広告費用を支払うやり方です。予算下限が決められていないため、1日1,000円~(例:Google)など低予算での広告出稿が可能です。クリック単価は、広告費 ÷ クリック数で計算が可能となります。
⑤費用対効果を検証しやすい
リスティング広告はユーザーのクリックで費用が発生するクリック課金方式です。費用対効果を数字で知ることが可能で、非常にわかりやすいのが特徴です。
さらに、効果検証においても4つの指標を基本として改善策を講じることができます。次の4つの指標を分析し、効果を分析します。
- インプレッション数:広告の表示回数。ターゲティングを広げるための指標となる
- クリック数:少ない場合、キーワードやターゲットを見直す
- コンバージョン数(CV):クリックに対し、お問い合わせなどのアクションにつながったかを示す数。広告文やランディングページを改善に役立つ
- クリック単価:広告の品質を見直す指標となる
STEP2自社の強み・ターゲット(ペルソナ)を明確にする
戦略の次のステップは、自社の強み・ターゲット(ペルソナ)を明確にすることです。リスティング広告での成功は、競合他社との差別化にあります。差別化が図れなければ、同じ市場でのパイを奪い合うだけになってしまうからです。自社の強みが明らかになっていれば、広告文での訴求もしやすく、はっきりと差別化することもできます。またリスティング広告の鍵となるキーワード選択には、ターゲット(ペルソナ)の理解が欠かせません。
①自社の強みを分析する
まずは、自社の商材の強み・訴求ポイントを把握しましょう。自社の強みを分析する際には、3C分析、SWOT分析などマーケティングのフレームワークが役立ちます。
3C分析は、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの頭文字を取って名付けられました。3つの「C」の視点を分析し、自社を取り巻く状況を理解します。業界内での競合など外部環境、また内部環境を含めた状況整理に有効なフレームワークとして知られています。3C分析ではあくまで「事実」を収集することに重きを置きます。予測や解釈はSWOT分析で行います。
SWOT分析では、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4要素から自社を分析します。市場機会や事業課題を発見できるフレームワークと言えるでしょう。SWOT分析を行い、自社の置かれている環境を見極め、「戦略目標」を設定します。
②ターゲット(ペルソナ)を明確にする
自社の商品・サービスのターゲットを理解後、あらためてペルソナを設定します。ペルソナとは、顧客の具体的な人物像を指す言葉です。性別や年齢、職業、生活スタイル、悩みなど実在する人物を想定し、細かくかつ具体的に考えることが大切になります。ペルソナの設定により、さらに顧客のニーズを深掘りできるようになります。中でもリスティング広告ではより詳細なターゲットを設定可能です。ペルソナの明確化は、広告のターゲット設定や地域・時間帯の設定にも活用できます。
ペルソナの作り方については、こちらもご参照ください。
マーケティングに必須のペルソナの作り方とは?必要性等の基礎知識と合わせて解説
STEP33つの要素をふまえて戦略を立てる
リスティング広告成功に向けた最終段階では、実際に戦略を立てます。自社の目指すべきゴールはどこにあるのか、そのために必要な全体設計、全体戦略を定めます。全体戦略での方向性を明らかにした後、「部分最適化」の実現を図っていきます。つまり全体戦略を達成するための手段や施策、細かな戦略を考える施策を行うことになります。リスティング広告を3つの要素でとらえ、戦略を立てる方法です。
3つの要素の改善で最大化を目指す
リスティング広告は「キーワード」「広告」「リンク先のページ(ランディングページ)」の3つの要素を持っています。3要素がそれぞれ関連し、互いに影響し合っています。そのため3つの視点で改善を図れれば、効果の最大化が期待できるのです。
キーワード設定のポイント
リスティング広告は、検索結果ページに掲載されます。ユーザーの検索するキーワードに連動して掲載されるしくみのため、キーワード選択が重要になってきます。ユーザーの検索意図、抱える悩みなども読み取りながらキーワードを選ぶ必要があります。事前に設定したペルソナの行動を細かく予測し、想定されるキーワードをじっくり考えましょう。
広告作成のポイント
ユーザーがクリックするのは「広告文」、検索結果ページに表示されるテキスト部分です。思わずクリックしたくなるような広告を作成し、アピールしなければなりません。検索キーワードを用いた理由を考えることで、ユーザーのニーズを満たすような広告文を考える必要があります。加えて、自社の強みが伝わるようなテキストにすることも重要です。
リンク先ページ(ランディングページ)作成のポイント
問い合わせなどのCVに結びつけるには、広告クリック後に表示されるランディングページ(LP)の内容に注力することも大切です。見やすさや導線の工夫、利用者の口コミを記載するなどのポイントを押さえたページ作成を行います。またAとBを比較し、より効果的な成果をもたらすかを測定するA/Bテストやより複雑な多変量分析など、効果を測りながら改善を図っていく必要があります。
まとめ
リスティング広告は、ターゲットやキーワードなどに合わせた細かい設定が可能な広告です。
そのメリットをより活用するため、自社の強みとペルソナをもとに絞り込みを行います。さらに「キーワード」「広告」「リンク先のページ(ランディングページ)」の精度の高さがCVに大きく影響します。3つの視点で全体戦略を構築することがリスティング広告を成功に導く鍵となります。
成功事例から学ぶ
CVを上げる運用の流れ
リスティング広告の特長や戦略の立て方についてお伝えしてきました。ここからはリスティング広告の運用実例を挙げ、CVを3.6倍に、検索クリック数を4倍に上げたケースをご紹介します。成功を導くためにどのような課題を見いだし、改善策を講じたのでしょうか。考え方や施策のポイントをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
CASECVは3.6倍、検索クリック数は4倍に
ドイツを本社とする家庭用設備機器メーカーE


ご紹介するのは、ヨーロッパを起点として世界に製品を供給している企業の日本法人です。本社をドイツに置くこの企業は、業界最大のメーカーとして知られています。日本法人が扱う家庭用設備は、技術力を誇り、特許も取得しています。その技術力は他の追随を許さず、オリジナリティに富んでいます。日本の企業にはない独自の企画力と技術面でのクオリティが強みです。
2019.02問い合わせ
ご依頼をいただいたときの状況と課題
最初にお問い合わせをいただいたのは、2018年8月です。すでにリスティング広告を行っていたものの、成果が出ていないとの内容でした。これまで広告運用を任せていた企業とのやり取りは月1回のレポートと打合せのみ。リスティング広告の運用方法や効果改善について、具体的な施策の提案がなく不満を抱えていたそうです。
クライアントは、お問い合わせ後の「現地調査」を重要な指標と考えていました。ところが広告から現地調査につながることはほとんどなく、成果が上がっていないのは明確でした。まずは徹底したヒアリングの実施を開始。過去の運用実績を分析したところ、キーワードにはズレはありませんでした。さらに調査すると、月によってクリック数の上下が大きいことが判明します。現地調査につなげるための動線の見直しを行いました。
2019.02運用開始
■ 運用開始時の状況 キーワード、広告、LPの3つの要素でそれぞれ分析をスタートしたところ、大きな課題があったのはLPでした。ドイツを本社とするクライアントは、ドイツで成果があがっていたLPを用いた運用を行っていました。構成や訴求の言葉が日本のマーケットに合っておらず、PVやCVに結びついていないと判断しました。
そこで運用のスタートと同時に、新たなLPの作成に着手します。2019年4月には、新しいLP2種類で運用を開始しました。ABテストを重ねた結果、2019年7月に一本化を図ります。あわせて広告文の見直しも実施しました。
- リスティング広告の成果が上がっていない
- 問い合わせのあとの「現地調査」につなげたい
- 広告のキーワードの選定は、適切に行われている。幅を増やすための施策を行う
- ドイツ本社の指定のLPが日本のマーケットに合っていないと判断。現地調査につながるようにLPの改善を行う
■ 成果弊社が運用を手がける前は、クリック数・CV数もかなり激しく変動していました。しかし弊社が運用を始めてからは安定するようになったのです。数字の大きな伸びはなかったものの、クライアントの要望する「現地調査」につながる率が大幅に向上しました。
2020.09CVアップのための施策開始
■ お客様からのご要望と当時の状況「現地調査」につながるという一定のゴールを達成した後、「数を増やしたい」とのご相談を受けました。そこで母数となる「お問い合わせ」の数(CVの数)を増やすべく新たな施策に着手します。
■ 実施した施策の内容入札方法を、それまでの「クリック数最大化」から「コンバージョン数最大化」に変更することを決定します。「コンバージョン数最大化」では、過去のCVのデータをもとに最適化した配信が行われます。CVにつながるターゲットにリーチしやすくなるメリットがあるためです。ただし、クリック単価が高くなる可能性もはらんでいました。このリスクに対しては、過去の運用実績から効果があると判断しました。
同時に、広告配信地域の変更も行いました。営業所のあるエリアでなければ「現地調査」につながりません。そこで地域制限をかけたのです。さらに、広告文やキーワードの追加も実施します。
設定したキーワード以外の類語を詳細に分析し、CVにつながった類語を追加して検証を開始します。
具体的なキーワードとして在宅介護につながる広告文やホームエレベーター関連を追加しました。
- 問い合わせ数を増やしたい
- 運用実績をもとに、入札方法を「クリック数最大化」から「コンバージョン数最大化」に変更
- 現地調査は地域が限られるため、広告配信地域を変更
- キーワードの最適化を進める。設定したキーワード以外の類語の分析を進め、実施と検証を行って、キーワードを追加する
- あわせて、広告文も追加。検証して最適化する



■ 成果施策を始めた翌10月にすぐに効果が出ました。問い合わせ数(フォーム送信のみの問合せ)が22件と倍を記録したのです。2020年の月平均問合せ数は10.5だったものの、2021年は20、2022年も22、2023年は26と明らかな伸びを記録しています。
現在運用前との比較

運用当初と2023年5月現在の比較
2020年9月 | 2023年5月 | |
---|---|---|
お問い合わせ数(リアル) | 10件(受注数1件) | 36件(受注数現状2件) |
CV数 | フォーム送信10件、電話8件 | フォーム送信32件、電話24件 |
クリック数 | 検索1119回 | 検索4,106回 |
クリック単価 | 検索249円 | 検索76円 |
※弊社で当時運用していたYahoo広告経由でフォーム送信・電話したCV数
今後の課題と展望
リスティング広告での成果により信頼いただいた結果、単発でSEOやGoogle広告のご相談も受けるようになりました。ホームページの製品ページを改修し、SEO対策を実施。わかりやすくなったと評価もいただきました。今後も、続けてSEOを強化する方向で動き出しています。広告から得られるCVには限りがあるため、検索からのCVも得る戦略をご提案しているところです。
一方、Google広告は苦戦を強いられています。今試している施策をGoogle広告で一通り導入し、成果が思わしくない場合は方向転換も検討しています。客層的にGoogle広告よりも期待ができるYahooやマイクロソフトに広告予算を回す可能性もあります。
プロが実践 成功法則から導く運用改善の5つのポイント
前項ではCMSproが行ったリスティング広告の運用の事例を紹介しました。次に運用の改善における5つのポイントを解説します。具体的にポイントをつかんでいただくため、紹介した事例での改善策についても詳しく説明していきます。
POINT1運用の目的・目標を明確化する
リスティング広告の運用を改善するには、目的・目標をあらためて明確にすることが肝要です。目的・目標をどれほど達成できているかを知り、その改善策を考える必要があるためです。先の事例では、問い合わせ(CV)の数という目標と、その先に「現地調査」を増やすという目的がありました。具体的には、目的の「現地調査」につながるLPの見直し、配信地域の設定を行っています。最適な施策を見いだすには、運用の目的は何か、目標の数値はどうかを明確にしなければなりません。
POINT2全体戦略から施策を考える
リスティング広告運用の改善策で大切なのは、まず全体戦略を打ち出すことにあります。個別の施策にとらわれてしまうと、目的の達成からずれてしまう可能性が生じるからです。特にリスティング広告の運用においては、クリック数やクリック単価、コンバージョン数など多くの指標を参照します。結果的に数字の改善にこだわることとなり、本来の目的がぼやけてしまいます。
事例でも、指標のクリック単価を意識せず、コンバージョン数を重視する「コンバージョン数最適化」という改善策を活用しました。実際に成果も得ています。全体戦略ありきで個別の施策の判断を行うことを心がけましょう。
POINT3キーワードの最適化を行う
リスティング広告で需要なのは、ターゲットにリーチし、コンバージョンにつながるキーワードを選ぶことです。入札方式を採用しているため、適切なキーワード選びは費用対効果をあげることに大いに関係します。
まず解析データをもとに、クリックされた関連キーワードの中から、除外キーワードと追加キーワードを見つけます。情報収集段階の潜在層向けのキーワードは除外し、新たにターゲットが検索に使っているキーワードを追加することを目指します。
事例では、リーチの幅を増やすために、設定キーワードの類語から新たなキーワードを見つけています。さらに検証を行った上で、キーワードの追加を実施しました。キーワード選定ではデータをふまえて定期的に検証し、最適化を測ることに力を入れましょう。
POINT4広告文・ランディングページの改善を行う
検索表示ページでクリックにつながるのは広告文です。加えてリンク先ページ(ランディングページ)で問い合わせなどのCVには、ページの内容が大いに影響を及ぼします。つまり広告文・ランディングページの検証と改善も、定期的に行うことで効果が得られるというわけです。
例えば追加キーワードを見つけた場合、そのキーワードに合わせて広告文も考える必要があります。
広告文には、ユーザーが調べたいこと、ニーズを踏まえるのが大前提です。その上で、自社のサービスや魅力を端的に伝えるかが鍵となるでしょう。
紹介した事例では、CVアップのために、まずLPと広告文の改善から始めています。ユーザーの行動をイメージして、広告文やランディングページを改善することをおすすめします。
POINT5PDCAサイクルを回し、効果の最大化を目指す
リスティング広告の成功には、定期的な解析データをもとにした分析と改善が不可欠です。分析に基づく効果検証、改善のPDCAサイクルを回していなければなりません。分析から課題を見つけ、キーワードやターゲットの再設定なども行い、さらなる成果アップを目指します。お伝えした事例でも、3つの要素のきめこまかい改善が成果を上げていることが見て取れます。全体戦略をもとに、3つの要素を最適化していき、効果の最大化を実現させましょう。
まとめ
弊社の事例を挙げ、リスティング広告の戦略の立て方や改善を行う流れについて解説しました。CV(コンバージョン)を上げるためには、3つの要素をそれぞれ見つめ直し、課題を見極めなければなりません。3要素のどこを改善すべきかを明らかにし、新たな戦略を立てることが肝要です。さらに定期的に改善を重ねていくことで、大きな成果につながることを念頭に置く必要があるでしょう。