心理学の用語でよくマーケティングに応用されるものに「ハロー効果」があります。
ある事象や特徴などがきっかけで、全体に対する印象が決定される現象で、特に一部の良い面(見た目や性質など)が原因で、それとは因果関係がない部分に関しても肯定的な評価を抱いてしまうことを指します。
この記事ではハロー効果について、身近な実例も交えながら、わかりやすくご説明します。
目次
そもそもハロー効果とはどういうもの?
1920年にアメリカの心理学者であるエドワード・ソーンダイクが論文の中でハロー効果について提唱しました。「ハロー(halo)」とは「後光」「光輪」を指す英単語です。
後光とは日本では仏や菩薩の身体からさす光、キリスト教では聖人全体を包み込む光のことを表します。
ありがたいと思うような場面や拝みたくなる状況を「後光がさす」とも言います。
ある対象物を評価する際に一部の目立つ事象や特徴によって、全体の評価が左右されるという現象のことをハロー効果と言います。
心理学では「認知バイアス」と呼ばれるものに分類されていて、簡単に言えば思い込みの一種です。
たとえば、スーツに革靴、髪型にいたるまでしっかりと整えている初対面の人に対してはどんな印象を抱くでしょうか?おそらく「きっちりとしている」「真面目な人」「清潔感がある」「仕事ができそう」「優秀そう」……というような印象を抱くかもしれません。
実際にその人は仕事ができるのか、優秀なのかはわかりませんが、スーツや革靴、髪型といった外見(後光)によってそのような思い込み=ハロー効果が生じているのです。
ちなみにハロー効果は「後光効果」「光背効果」とも呼ばれます。
対義語には「ホーン効果」というものがあります。
「ホーン」とは「悪魔の角」という意味で、一部の悪い事象や特徴のせいで、全体に対して否定的な評価をしてしまう現象のことを指します。
諸刃の剣!?ポジティブ・ハロー効果の特徴
特に一部の良い要素に引っ張られて全体の評価が肯定的なものになることを「ポジティブ・ハロー効果」と呼びます。
前章に挙げた例は典型的なポジティブ・ハロー効果の実例です。
就活の面接などではスキルや学歴、キャリアなどに自信がなくても、外見を整えて清潔感がある格好をすれば、採用担当者に好印象に見られる可能性もあります。
一方でご自身が物事を判断する際にはポジティブ・ハロー効果に囚われてしまう可能性もあるので、注意が必要です。
典型的なのが詐欺師です。
彼らはしっかりと外見を整え、いかにも誠実で親切そうな態度で、耳あたりがよいことを口にしながら近づいてきます。
「いい人そう」「私のことを思ってくれている」というハロー効果が生じた結果、詐欺師から大金をだまし取られるという事例は枚挙に暇がありません。
第一印象にご注意を!?ネガティブ・ハロー効果の特徴
ネガティブ・ハロー効果とはポジティブ・ハロー効果の逆であり、一部の悪い要素によって全体が悪く印象付けられてしまう現象のことを指します。
たとえばくたびれたスーツにボサボサの髪、汚れた革靴を履いているような人を見かけたらどんな印象を抱きますか?
おそらく「だらしがない」「仕事ができなさそう」「不潔」「お金がなさそう」……というイメージをもつかもしれません。
実際にその人が非常に優秀でお金持ちであっても、外見によって悪い評価をされてしまうのです。
いくら魅力的な商品・サービスがあっても、ネガティブ・ハロー効果が生じているがために、その魅力が通じない例も数多くあります。
身近に存在するハロー効果の例
他にも私たちの身のまわりにはさまざまなハロー効果が生じています。
たとえばありきたりな料理でも、上質な器に美しく盛り付けることで、美味しそうに見えることがあります。
店構えも重要です。出す料理は同じでも、外観や内装がきれいでおしゃれなお店のほうが美味しそうに見えます。
店構えや盛りつけで、高級レストランのように演出することも可能です。
他にも商品のデザインをかっこいいものにしたり、パッケージを高級感があるものにしたり、きめ細かい丁寧な接客サービスをしたりすることで、ハロー効果を生じさせることができます。
企業の広告やCMにおけるハロー効果
よくあるのがCMに人気のタレントを起用することです。
好感度が高い芸能人が宣伝していることで、その商品やサービスまでもが魅力的に見えるというハロー効果を生み出すことができます。
同様に権威がある人(評論家や学者などの専門家)が紹介することで、やはりその商品やサービスがいいものに思えてきます。
Webでもハロー効果を与えることが可能です。ホームページのファーストビュー(最初に表示される部分)は、そのサイトあるいは商品・サービス全体の評価に関わります。
ファーストビューを良くしておけば、より商品・サービスが魅力的なものに感じられるようになります。
人の評価におけるハロー効果
ハロー効果は人とコミュニケーションをとる、あるいはマーケティングを行う際には非常に有効です。
しかし、ハロー効果はあくまで印象を左右するのみで、長続きしません。
その人と接している時間が長くなったり、商品やサービスを使い続けたりすることで、本質が見えてきます。
たとえば外見がよくて優しそうな人に恋をして付き合ったのにもかかわらず、相性が合わなかったり自分の理想像とはかけ離れていた人物だったりして幻滅したという経験をしたことがある方もいるかもしれません。
CMを見て商品を買ってみたけどそれほど良いものではなかったということもあります。
ハロー効果で商品やサービスが売れたとしても、それらが本当によいものでなければ、すぐにユーザーが離れていってしまいます。
まとめ
第一印象は非常に大切です。
第一印象で良い評価を与えれば、ハロー効果が生じて相手が選んでくれる可能性が高まります。
マーケティングの世界でも非常に基本的かつ重要な要素となりますので、ぜひ意識してみてください。
一方で、ハロー効果はあまり持続しないのがデメリットと言えます。
ハロー効果を駆使すれば自分や商品・サービスを売り込むことができますが、それ以上に中身をブラッシュアップすることが大切です。
監修者谷口 翔太リンヤ株式会社 代表取締役
2007年「リンヤ株式会社」を創業。WEBマーケティング歴16年。草創期より一貫してWEBマーケティング の専門家として、多くの企業の収益向上に貢献。これまでに手がけた企業は2902社。豊富な経験を活かし、SEO対策を中心とした効果的なWEB施策により集客最大化を図る。HP制作から運用まで顧客企業をトータルでサポートしている。