「●●しないで」「●●するな」と言われていたことを、ついつい気になってしてしまったという経験はありませんか?
こうした心理現象のことを「カリギュラ効果」と呼びます。
言われたことと逆の行動をしてしまうので悪い面もあれば、あえて制限をすることで自分が意図した行動を相手に起こさせることも可能です。
今回はカリギュラ効果の意味や事例、マーケティングに活用する方法について解説します。
くれぐれも悪用は厳禁です。
目次
カリギュラ効果とは?
カリギュラ効果とはなにかを規制されることで、かえって興味が湧いて行動に移してしまう心理現象のことを指します。
たとえば子どもの頃に「あそこに行ってはいけません」と親に言われていたのについつい行ってしまったり、校則で禁止されている行動をしてしまったりした経験はありませんか?
これはカリギュラ効果が働いているからなのです。
もちろん大人でもカリギュラ効果は発生します。
新型コロナ禍では大きく行動が制限されましたが、そういうときに限って旅行や外食に行きたくなる気持ちが強くなります。
実際に行動制限がかけられている最中に外出してしまった方もいらっしゃるかもしれません。
これもカリギュラ効果の一種と言えます。
人は行動を制限されるとストレスが溜まり、それに無意識のうちに反発してカリギュラ効果が生じてしまうのです。
カリギュラ効果は学術的名称ではない?
カリギュラ効果の正式名称は「心理的リアタクタンス」です。
心理学者のジャック・ブレーム氏は「人は自由を制限されるとそれに反発し、より自由に執着する」として心理リアタクタンスを提唱しました。
通称であるカリギュラ効果の由来は1980年代にアメリカとイタリアが合同で制作した『カリギュラ』です。
ローマ皇帝のカリギュラを描いたこの映画には残虐なシーンや性的に過激なシーンが多く含まれ、アメリカのボストンでは教育機関が多くあることから上映禁止になりました。
しかし、それがかえって多くの人の興味をそそり、大ヒットとなり、ボストンでもやむなく上映が解禁されたのです。
こうした現象になぞられて、心理リアタクタンスのことを一般的にカリギュラ効果と呼ぶようになったと考えられています。
国内外に古くから見るカリギュラ効果
人間は多かれ少なかれカリギュラ効果の影響を受けます。
昔話や童話にもカリギュラ効果が描かれている作品は少なくありません。
有名なのは御伽草子の『浦島太郎』です。
主人公である太郎は竜宮城から帰るときに乙姫様から玉手箱をお土産として渡されました。
「絶対に開けないでください」と言われていたのにもかかわらず、その約束を破って玉手箱を開けてしまった太郎はおじいさんになってしまいました。
これはカリギュラ効果がもたらした結果です。
グリム童話の『青ひげ』は、青いひげをはやした男が主人公の話です。
彼はお金持ちで何人もの女性と結婚していました。しかし、妻たちは必ずどこかへ姿を消してしまうのです。
新たに結婚した女性は青ひげから小部屋の鍵を渡され「この小部屋の中に入ってはいけない」と言われましたが、女性は小部屋の中が気になって入ってしまいました。
そこには青ひげと結婚した妻たちの死体がありました。
他にもさまざまな作品でカリギュラ効果が使われていて、教訓として語り継がれています。
身近に潜むカリギュラ効果の良い例と悪い例
言われたことと真逆の行動をとってしまうカリギュラ効果。
老若男女だれしもこの影響を受けることがあり、私たちの身近にも多く潜んでいます。
悪い結果になってしまいがちですが、うまく使えば良い結果を得られる可能性もあります。
ここからはカリギュラ効果の良い例と悪い例を見ていきましょう。
【良い例】
恋愛
好きな異性にあえて関心がないふりをしたことはありませんか?
実はこれはカリギュラ効果を利用した恋愛テクニックなのです。
特にモテる人は異性からチヤホヤされることが当たり前となっています。
多くの人が優しくしてくれてアプローチしてくる環境下で、自分にそれほど関心を示さない人がいると、「なんで関心をもってくれないの?」と疑問に思い、かえってその人が気になってしまうものです。
その結果、徐々に自分に関心を持ってくれない人に興味を持ちはじめ、振り向いてくれるようになる可能性が高くなります。
他にもあえて連絡をしない、デートの誘いを断るといったテクニックもカリギュラ効果を利用したものです。
制限を与えることで、より相手の恋愛感情が高まります。
また、両親や周囲から結婚や交際を反対されたときに、別れたくなくなるのもカリギュラ効果の結果です。
【悪い例】
教育
カリギュラ効果が悪い結果をもたらす典型例として教育が挙げられます。
特に子どもは好奇心が旺盛で、ダメと言われたことをついついしたくなってしまいます。
「ゲームをしちゃダメ」と言われてゲームがやりたくなってしまった経験がある方、あるいは逆にお子さんが言うことを聞かないという経験がある方もいらっしゃるかもしれません。
他にも近所に危険な場所があって、「あそこに行ってはダメ」と口うるさく言ってしまうと、かえって反発してしまう可能性があります。
その結果事故や事件に遭うかもしれません。
頭ごなしに「あれもダメ」「これもダメ」と制限するのではなく、やってはいけない理由をしっかり説明することと、お子さんの好奇心を他の手段で満たしてあげることが大切です。
ダイエット
カリギュラ効果はダイエットを妨げる要因になります。
食事制限をしているのについつい食べてしまった経験はありませんか?
「お菓子禁止!」「麺類は摂らない!」と制限をかけていることで、やはりそれらが食べたくなってしまいます。
その結果、欲求と罪悪感に苛まれ、ダイエットが辛くなってしまったり断念してしまったりするのです。
禁酒や禁煙も同じです。
お酒やタバコを我慢することで、それらが欲しくなってしまいます。
カリギュラ効果のマーケティング活用法
カリギュラ効果をマーケティングで巧みに使いこなすことで、より大きな成果を上げることができます。
典型的なのが記事や動画のタイトルに「【閲覧注意】」や「●●するな!」というフレーズを盛り込むという手法です。
このように、見込み客に制限を与えることで、カリギュラ効果を発生させ、コンテンツに誘導することができます。
ここからはカリギュラ効果をマーケティングに応用する手法をプロが伝授します。
ターゲット・ターゲット以外に制限を加える。
カリギュラ効果は制限された行動をしてしまう心理現象のことですが、逆に相手に行ってほしい行為に制限をかけることで、自分が意図した行動をとってくれるようになります。
ターゲットに制限を与える方法とターゲット以外に制限を与える方法の2種類があります。
ターゲット
まずはターゲットとなる見込み客に直接的に制限をかける方法です。
たとえばニュース記事で「会員限定」「続きは有料になります」と制限をかけることで、そのニュースが気になっているターゲットの興味関心を高め、会員登録や購買を促すことができます。
資料請求もカリギュラ効果を活用したテクニックです。
個人情報を入力しないと資料が手に入らないという制限を与えることで、請求をしてくれる可能性が高まります。
見込み客の情報も手に入れられるので一石二鳥です。
ターゲット以外
あえてターゲット以外の人たちに制限を与えるのも効果的です。
実は今回の記事もこのテクニックが使われています。
「マーケティング心理学に興味ない人は絶対見ないで!カリギュラ効果を徹底解説【マーケティング心理学】」というように、「マーケティング心理学に興味ない人」というターゲット以外の人に対して「絶対見ないで!」という制限を与えています。
これによって、「マーケティング心理学に興味がある」というターゲットの関心を惹くことが可能です。
事実、あなたもこのタイトルによってカリギュラ効果の影響を受け、今この記事を読んでいるということになります。
限定性を持たせる
他にも条件や時間など、さまざまな制限を与えることで見込み客にカリギュラ効果を生じさせることができます。
前述の「会員限定」は典型例です。他にも「本日限り」「18時までの限定」というように時間的制限を与えたり、「当店限定」という地理的制限を与えたりすることで、カリギュラ効果を生じさせることが可能です。
バーナム効果と併用する
特定の悩みを持っている人をターゲットにマーケティングを行う場合、カリギュラ効果とバーナム効果を併用するのがおすすめです。
職場の人間関係で悩みを抱えている人は、「職場の人間関係に悩んでいる人は絶対見ないで」「職場の人間関係に悩んでいる人は●●しちゃダメ!」というタイトルの記事や動画に自分ごととして反応するでしょう。
しかも、職場の人間関係に悩んでいるという人は母数が多いので、アクセスアップにも寄与します。
今回の記事の「マーケティング心理学に興味ない人は絶対見ないで!」というタイトルも、「マーケティング心理学に興味がある人」に対してカリギュラ効果とバーナム効果を同時に与えています。
カリギュラ効果との併用に向いているバーナム効果とは?
バーナム効果とは多くの人が当てはまる事柄が、自分に強く当てはまると感じてしまう心理現象のことを指します。
たとえば占いで「あなたは職場の人間関係で悩んでいるでしょう」と言われたとします。
人は誰しも大なり小なり人間関係の悩みは抱えていますが、しかも一日の大半を過ごす職場で問題が起こる可能性は非常に高いです。
しかし、占いで改めて「あなたは職場の人間関係で悩んでいるでしょう」と指摘されることで、それが自分に当てはまっていると強く感じてしまうのです。
バーナム効果に関して、詳しく知りたい方は「バーナム効果とは?信頼を勝ち取る魔法の心理学」をご覧ください。
カリギュラ効果が逆効果にならないために
カリギュラ効果を活用したマーケティング手法は、本当は見込み客にしてほしい行為を制限する、いわば「逆張り戦略」です。
ターゲットの選定や使うタイミングなどを間違えると、本当に行動してくれなくなってしまう可能性もあります。
ここからはカリギュラ効果の注意点について見ていきましょう。
制限理由の明確化
まずは「なぜダメなのか?」という制限を加える理由を明確にしましょう。
ただ「カリギュラ効果をマーケティングに利用するな!」と言っても、ターゲットの中では「ああ、そうなんだ」で終わってしまう可能性があります。
「カリギュラ効果をマーケティングに利用するな!
顧客が集まりすぎて競合から嫌われてしまうかもしれません」というように制限理由を明確化することで、ターゲットの興味をよりそそることができます。
制限には反発の余地を残す
あまりに制限を強くしすぎると、かえってカリギュラ効果が生じない可能性があります。
たとえば「カリギュラ効果をマーケティングに利用するな!」というタイトルをつけてコンテンツに誘導し、冒頭だけを見せて「続きは有料会員のみ」というように、何度も制限を加えてしまうと離脱につながります。
制限の程度や回数は見込み客が反発できる範囲内に抑えましょう。
キャッチコピーや動線の工夫などで見込み客の行動をあえて制限することでカリギュラ効果が生じてアクションにつながるかもしれません。
驚異的な結果が出る可能性がある反面、使い方を間違えるとかえって成果から遠のいてしまう両刃の剣なので、乱用は厳禁です。
監修者谷口 翔太リンヤ株式会社 代表取締役
2007年「リンヤ株式会社」を創業。WEBマーケティング歴16年。草創期より一貫してWEBマーケティング の専門家として、多くの企業の収益向上に貢献。これまでに手がけた企業は2902社。豊富な経験を活かし、SEO対策を中心とした効果的なWEB施策により集客最大化を図る。HP制作から運用まで顧客企業をトータルでサポートしている。