マーケティングの場では、様々な心理効果が活用されています。
その中でも有名なのがバーナム効果です。
バーナム効果を使うことで相手との距離が縮まるため、商品やサービスに興味を抱いてもらいやすくなります。
そこでバーナム効果の活用法と共に、使用する際に注意したいことについて詳しくご紹介します。
目次
バーナム効果とは?
バーナム効果とは、あらかじめ準備行動をすることで、誰にでも当てはまる事柄を「自分に向けられたものだ」と思い込んでしまう心理効果のことです。
実際には誰にでも当てはまる内容であるにも関わらず、事前に何らかの行動を伴うことで自分に当てはまっていると錯覚してしまいます。
アメリカ合衆国の興行師で後のサーカスを設立したP・T・バーナムが言ったとされる「we’ve got something for everyone(誰にとってもいいと思えるものがここにある)」という言葉から、アメリカ合衆国の心理学者、ポール・ミールが名付けました。
バーナム効果と同義のフォアラー効果
バーナム効果と同じ意味で、フォアラー効果という呼び方もあります。
これはアメリカ合衆国の心理学者、バートラム・フォアが心理検査によりバーナム効果を検証したことから、その名がつけられました。
フォアは人が占いに夢中になるのはなぜなのかを研究しており、その裏付けのために心理実験をしたと考えられています。
フォアラー効果の実験
バーナム効果を実証するために、フォアは以下のような実験を行いました。
まず、被験者に対して性格診断を目的とした心理テストを行い、その結果を後日被験者ひとりずつに渡して内容が当たっているかどうかを評価してもらったのです。
評価は5段階で、非常に正確である5からまったく当たっていない0までとなっていました。
その結果、評価の平均は4.26と多くの被験者が「当たっている」と感じていることが分かったのです。
実はフォアが被験者に渡した心理テストの結果は、全員同じ文章で、しかも新聞の星座占いを組み合わせて作成したものでした。
それでも被験者は「これは自分のことを書いている文章だ」と思い、高い評価をつけました。
このことから事前に働きかけを行うことで相手は信じ込みやすくなる、バーナム効果が得られることが分かったのです。
確証バイアスに由来するバーナム効果
バーナム効果には、確証バイアスも大きく関わっていると考えられています。
確証バイアスとは、自分にとって都合の良い面だけを見て、それ以外の自分にそぐなわない面は見ようとしない、またなかったことにする見方の偏りのことです。
例えば血液型や星占いで「血液型がB型の人はマイペースだ」「おひつじ座の人は面倒見がいい」という話を信じていたら、友達がマイペースな人でB型なら「当たっている」と思います。
B型でおひつじ座の友達が「面倒見はいいが特にマイペースというわけでもない」としても、「おひつじ座の性格は合っている」と思うので、B型の性格は気にしなかったりするのです。
バーナム効果では、確証バイアスが強く働くため、「自分に向けられた言葉」だと思い込んでしまう傾向にあります。
バーナム効果を検証したフォアの実験でも、「これは心理テストの結果である」「実験をしているのは有名な(信頼できる)心理学者だ」「間違ったことを言われるはずがない」という確証バイアスが強く働いたことも影響していると考えられています。
バーナム効果を生み出す4つのポイント
バーナム効果によって、心理的な距離が縮まりより信頼度が高まることから、商品やサービスへの関心を集められることが分かっています。
そこで、実際にバーナム効果を生み出すにはどうすればいいのか、押さえておくべき4つのポイントについて見ていきましょう。
「あなただけ」と思わせる
バーナム効果を出すためには「あなただけ」と思ってもらうことが大切です。
占いでも新聞やテレビの星占いよりも、お金を払って見てもらう占い師の言葉の方が、「自分だけ」に向けられるアドバイスだと感じやすくなるのと同じです。
ダイエットだと「やせたい」「きれいになりたい」という人に向けて、「やせたいと色んな方法を試しているのに挫折してしまう」と寄り添った内容でアピールすれば「自分もそうだ」と感じてもらいやすくなります。
また「あなた」や「〇〇さん」と主語を絞ること、「案内はあなただけにしています」といった言葉も高い効果につながります。
発信者の権威性の担保
発信する人が信頼に値する存在であるかも重要です。
例えば多くの占いの本の中で、誰が言っている言葉なのかが選ぶ理由になることがあります。
これは売れる占い師に見て欲しいと思う心理と同じです。フォアの実験でもそうでしたが、権威のある人の言葉、誰もが知っている有名人の言葉は、多くの人が影響を受けてしまいます。
肩書きや権威は高い効果を生み出しますが、必ずしもなければいけないというわけではありません。
「50万個の販売実績」といったはっきりとした実績を示す、詳しい情報を開示するといった方法でも信頼度がアップするのでバーナム効果が高まる後押しとなります。
ポジティブな内容
ポジティブな内容にすることも大切です。
確証バイアスのところでもご紹介しましたが、ポジティブで前向きな言葉や内容の方が「信じたい」と思う人の心に残るためです。
ネットで「〇〇は危険?」といったタイトルだと注目を集めやすいですが、マイナス面ばかりを強調してしまうと聞いてもらえなくなる可能性が高くなります。
明るい内容をメインにして、ネガティブな言葉も比較対象として取り入れる程度にするといいでしょう。
マルチプルアウトな表現
様々な解釈ができるマルチプルアウトな表現を取り入れることも大切です。
どちらでも解釈できる言い方をすることで、バーナム効果を高めることになります。
ただ、後で言い逃れができるという表現でもあるため、バーナム効果で使用する際には注意が必要です。
相手の身なりや立場、置かれている環境などを分析し、当てはまりやすい言葉を考えることが大切です。
年代ごとに抱える悩みは違いがありますので、日頃から分析を深めておくといいでしょう。
バーナム効果の具体例
バーナム効果がどういった場面で活用されているのか、分かりやすい例を3つご紹介します。
日常生活で私たちにもなじみ深いものばかりですので、バーナム効果をビジネスに活用したいと考えているなら、ぜひ参考にしてみてください。
占い
バーナム効果が最も活用されているのが占いです。
占いは誰にでも当てはまる内容であることがほとんどです。
同時に前向きな言葉や行動を迷っている人の指針となるアドバイスが提示されていることが多く、当てはまらない部分は確証バイアスが働くことから正しい情報と受け取られる傾向にあります。
また星座や星の運行表、生年月日といった材料で占ってもらうことで、自分だけに向けられた言葉だと信じてしまうことが少なくありません。
血液型診断
占いと同じく、血液型診断もバーナム効果が活用されています。
血液型占いは日本独自の占いであり、科学的な根拠はありません。
それでも多くの人が血液型診断を信じる傾向にあります。
占いと同じように信じている人には強い確証バイアスが働くため、当てはまらなくても「ほとんどの人には当てはまっている」と解釈される傾向にあります。
おみくじ
おみくじは占いと同じく誰にでも当てはまる内容となっています。
特におみくじは番号で選ぶため、用意されている内容は誰にでも当てはまるように作成されているからです。
ただ、おみくじと占いには、「運命によって導かれた結果」であるという考え方があるため、偶然であっても「自分が占ってもらった」「自分で選び出した」ことに意味があると見なされます。
そのため、おみくじや占いは他人の結果では意味がありません。
自分から占ってもらった、自分だけに分かる方法で占ってもらったなど「自分の意志による行動」が強い意味を持ちます。
バーナム効果のマーケティング活用法
バーナム効果をビジネスに効果的に活かすためにはどうすればいいのでしょうか。
ここではバーナム効果をマーケティングに活用する際、参考にしたい場面2つについて詳しくご紹介します。
セールストーク
商品やサービスによって、顧客の悩みを解決できる場合、バーナム効果を使ったセールストークが効果的です。
相手の悩みを理解し、解決するための手段として提案ができれば相手は「私の立場を考えてくれている」と受け止めてくれるためです。
会社の引越しに悩む担当者に「引越業者にお任せください」とセールストークをするCMがありますが、これもバーナム効果を活用した方法の1つです。
広告
多くの人の目に触れることが多い広告にも、バーナム効果を活用することができます。
広告の場合は「あなただけ」という表現は難しいですが、誰にでもある悩みに寄り添うことが可能です。
例えば若い世代なら「落ちにくい二の腕のお肉にお困りではありませんか?」、年配の方向けなら「最近眠りが浅くて困っていませんか?」と広告の最初に呼びかけを載せることで、当てはまる人に興味を持ってもらうことが可能です。
バーナム効果の過度な使用は避けよう!
バーナム効果は信じやすい人に対して悪用されることもあるため、過度な使用をしないようにしましょう。
相手によっては「信じていたのに騙された」と思われることもあるためです。
また相手の立場や境遇を理解しないまま使用すると、当てはまらないだけでなく不快な思いをさせてしまうこともあります。
リサーチをしっかり実施し、必要とする人に商品やサービスが届くようにすることが大切です。
誰にでも当てはまる文言であっても、「自分に当てはまっている」と感じさせるバーナム効果は、マーケティング手法として広く活用されています。
ただ相手に合わせて内容を変えたり、相手のことをリサーチせずに活用したりすると逆効果になりかねません。
相手に商品やサービスを信用してもらうためにも、届ける相手のことをしっかりと知ることが大切です。
使い方次第で大きな結果が得られるバーナム効果を上手にマーケティングに活かしましょう。
監修者谷口 翔太リンヤ株式会社 代表取締役
2007年「リンヤ株式会社」を創業。WEBマーケティング歴16年。草創期より一貫してWEBマーケティング の専門家として、多くの企業の収益向上に貢献。これまでに手がけた企業は2902社。豊富な経験を活かし、SEO対策を中心とした効果的なWEB施策により集客最大化を図る。HP制作から運用まで顧客企業をトータルでサポートしている。