最近「Z世代」というワードを頻繁に聞くようになりました。Z世代とは、1990年後半頃から2012年頃生まれの若い世代を指す言葉です。従来世代とは異なる価値観を持ち、情報収集の方法にも違いがあります。
今後、Z世代が労働人口の中心となり、消費の担い手となっていくのは間違いありません。この記事では、日本の「Z世代」の特徴と消費行動をマーケティングの視点から詳しく読み解いていきます。
目次
Z世代とは?語源を解説
Z世代とは1990年後半頃から2012年頃に生まれた世代を指します。2022年12月現在で10歳~26歳、小学生~大学生と社会人4年目辺りまでの人々です。
日本及びアメリカ、その他英語圏の国々では、世代を区分けし、それぞれに各国共通の名称をつけています。1983年頃から1995年頃までに生まれ、2000年以降に成人を迎えた世代を指して「ミレニアル世代」と呼びますが、その次の世代が「Z世代」です(ちなみに《Z世代》の次の世代は《α世代》と言います)。
社会情勢等の影響により、各世代の特徴、消費傾向は異なっています。世代ごとの違いはマーケティング戦略を考える上では、欠かせない基礎知識です。
【特徴】Z世代のライフスタイルや行動などの特徴
ミレニアル世代以前とZ世代とでは、ライフスタイルや行動に大きな違いがあります。Z世代ならではの代表的な4つの特徴についてご紹介します。
1.デジタル&SNSネイティブ
Z世代の代表的な特徴は、生まれたときからインターネット、SNSがすでにあったという点です。Z世代が「デジタルネイティブ」「スマホネイティブ」「SNSネイティブ」と呼ばれるゆえんでしょう。
Z世代にとってスマートフォンやSNSは、物心ついた頃あるいはそれ以前から身近な存在だったわけです。膨大な情報源にいつでもアクセスできる環境のもと育ったZ世代は「生粋の」デジタル、SNSネイティブと言えるでしょう。
当たり前のようにネットメディア閲覧やSNS上のやり取りを行い、それらを利用したコミュニケーションにも長けています。
2.承認欲求が強く他人からどう見られるかを気にする
Z世代にとってデジタルデバイスやSNSは、「気づけば近くにあったもの」です。SNSのコミュケーションに重きを置き、気づいたらスマートフォンをのぞいているのも自然なこと。いつも誰かとつながっていたいと思うのもZ世代ならではの特徴となっています。インターネット上、さらにはSNSの中で常に誰かとつながり、認められたいと思う傾向が強いのです。
Z世代はSNSにおける他者からの評価も常に気にせずにはいられません。結果としてSNSで「自分を価値ある存在」とする欲求、承認欲求につながっています。
3.効率性を重視する
Z世代が生まれてから、スマートフォンなどのデジタルデバイスをはじめ、AI、VRなどの技術革新、ICTの普及が進んでいます。業務やコミュニケーションをいかに効率化するかに重きがおかれるようになりました。
Z世代が好んで使う「コストパフォーマンス(コスパ)」や「タイムパフォーマンス(タイパ)」という言葉でも明確なように、まず効率ありきの傾向が強いのも特徴の一つと言えます。
4.オープンな環境や平等を好む人が多い
Z世代は、価値観やライフスタイルにおいて多様性や平等さを尊重し、肯定します。
SNSは性別や国籍、年齢や職種の垣根なく交流する機会が持てるアイテムです。日常的にさまざまな人たちとの交流を日常的に行ってきたZ世代のコミュニケーションは、オープンでフラットな環境が当たり前になります。
社会貢献意欲も高く、ジェンダーやSDGSへの関心が強い人が多いのもZ世代ならでは。多様性を受け入れながら、自分らしさも大切にします。
【消費傾向】Z世代が行う消費の傾向とは
デジタルネイティブ、SNSネイティブであるZ世代は従来世代とは異なる価値観やライフスタイルを持っています。
Z世代特有の行動が見られるのは消費に関しても同様です。Z世代の消費行動として特徴的なポイントは次の5つが挙げられます。
1.コスパ・タイパを重視
日本のZ世代は不況や不安定な社会の中で育ってきています。そのため経済面では堅実、保守的な面も持ち合わせているのです。
商品やサービスを購入する際、高価格でも低価格でも「自分が納得できるか」「実利が得られるか」を重視します。コストに対する効率、コスパ(コストパフォーマンス)を大切にするのはそのためです。
一方で、デジタルネイティブとして「IT技術の進化でいかに時間をかけずに目的を達するか」の重要さを知っている世代でもあります。時間対効果を意識し、かけた時間に対する満足度であるタイパ(タイムパフォーマンス)も重視する傾向にあります。Z世代の中には限られた時間の中で最大限の満足を得るため「動画を倍速で視聴する」「映画などの結末を調べてから視聴する」などの行動を取る人もいます。
2.モノ消費よりコト消費でリアルな体験を重視
これまで商品・サービスを購入、持つことに意味を見いだす「モノ消費」という価値観が一般的でした。
Z世代は消費やサービスなどの機能的な価値=「モノ」に重きをおきません。
「コト」の消費に価値を見いだしています。商品やサービスの個々の機能ではなく、消費を一連の体験として捉える「コト消費」の考え方です。
例えば商品を購入する以前にさまざまな情報や口コミをSNSで検索し、実店舗で購入します。さらに使った体験をシェアするなど「一連の体験」を重視するのです。最近ではコト消費に加え、特定の日程や場所、時間のみで体験できる「トキ消費」も注目されています。
音楽フェスやハロウィンなどのイベントなどが該当し、いずれも「リアルな体験」に価値を見いだす点が特徴です。
3.ブランドよりも共感・心を動かされるものを好む
Z世代は、従来の世代と比較してブランド志向が少ない傾向にあります。
自分の思いや価値観を基準として共感が得られるかどうか、心が動かされるかどうかを最も大事にします。
商品やサービスの「リアル」を感じられるメッセージに共感し、消費する場合が多くなっています。メディアによって作り込まれたトレンド、企業の作り込まれたメッセージよりも、「リアル」なストーリーに納得できるかどうかで購入や利用を決定します。
4.自分らしさを大切にしている
SNSなどのデジタルな情報源が身近にあり、世界中から多様な情報に接する機会を得ていたZ世代。さまざまな価値観があり、答えは一つではないことも知っています。オープンでフラットな考え方を持ち、「自分」のあり方や価値観も大事にしています。他人と競ったり、比較したりするのでなく、自分らしさを大事にするのがZ世代の考え方です。
5.SNSを通じて物を買う
購入する予定がなかった商品やサービスであっても、SNSで認知したのをきっかけに購入するのもZ世代ならではです。
InstagramやTwitterなどSNSでは、企業アカウントがクーポンやキャンペーンなどのセール情報を発信しているケースがあります。商品の紹介動画などユニークなPRをする企業も少なくありません。また一般のアカウントでも商品を使った感想や口コミを投稿している人が多くいます。いずれもZ世代の購買意欲を刺激し、実際の購入へとつながります。
【情報収集傾向】Z世代に人気のメディアやSNSを徹底解説
Z世代にとっては情報収集先であり、時には商品購入、サービス利用の決め手にもなるメディアやSNS。利用者が多く、人気を集めるメディアやSNSについて詳しくお伝えします。
※ご紹介する調査結果は年代別に集計を行っているため、20代を中心に、Z世代から外れる人も兆歳対象として一部含まれています。
【利用者の多いデバイス】スマホのシェアが圧倒的多数
Z世代の使用デバイス(行為者率)
10代 | 20代 | |
---|---|---|
スマホ | 平日:84.5% 休日:85.2% |
平日:93.9% 休日:94.4% |
PC | 平日:15.5% 休日:12.0% |
平日:31.0% 休日:15% |
タブレット | 平日:8.1% 休日:9.2% |
平日:7.5% 休日:7% |
Z世代を含む10~20代で最も多く利用されているデバイスはスマートフォン(スマホ)です。他を引き離して圧倒的なナンバーワンとなっています(参考:総務省『令和3年度版 情報通信白書』)。
ちなみにこの調査における「行為者率」とは15分以上行動をとった人の割合です。同じ「テレビを視聴する」という行動であっても、15分以上見続けている人がカウントされます。
Z世代の中心となる20代から見てみましょう。インターネット利用において、使用するデバイスはスマホが休日、平日共に9割。PCは3割弱、学習教材にも使用されるタブレットに至ってはわずか7%近くという結果が出ています。
10代もほぼ同じ傾向にあり、スマホが8割、PCは15.5%と1割をかろうじて超えています。タブレットは8~9%前後で20代よりは少し多い結果となりました。10代20代共に休日の平均利用時間が平日を上回っています。
【検索手段】Google・YouTube・Twitter・インスタが多数
参考:参考:スマホで検索するときに重視していることや調べるジャンルは?|LINEリサーチ
インターネットで情報を検索する手段として、検索エンジンやSNSなどさまざまな方法があります。Z世代はどのような方法で情報収集を行っているのでしょうか。
メッセンジャーアプリのLINEが公開するデータによると、スマホ検索時に利用するサービスZ世代の中でも10代男女と20代男性では検索エンジン「Google」が第1位、2位に「YouTube」、3位「Twitter」と続きます。20代女性では1位「Google」と3位の「Twitter」は変わらないものの、2位には「Instagram」が登場しています。
男女や年齢により順位に変動はありますが、Z世代ではGoogle・YouTube・Twitter・Instagramの4サービスを使うのが一般的になっているとわかります。
【人気のSNS】LINE・Instagram・Twitterの3強
Z世代の主要SNS利用率
10代の利用率 | 20代の利用率 | |
---|---|---|
LINE | 92.2% | 98.1% |
72.3% | 78.6% | |
67.4% | 78.6% | |
13.5% | 35.3% |
参考:令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書
Z世代の主なSNS系サービス・アプリ等の利用率についての調査では、Z世代の9割超が「LINE」を利用し、「Instagram」も約8割が使っていることが明らかになっています(参考:情報通信政策研究所『令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書』)。「LINE」は20代に限ればほぼ100%が利用しています。
「Twitter」に関しては、10代の利用率がやや低い傾向が見られました。またZ世代全体で「Facebook」の利用率が低いこともわかります。
動画共有系の「YouTube」と「TikTok」については、次の項目であらためてご紹介します。
また調査は年代別の統計であり、20代には厳密に言うとZ世代に当てはまらない人も含まれていることをご留意ください。
【人気の動画共有サイト】Z世代のYouTube利用率は100%近く・TikTokは約半数が利用
Z世代の動画共有サイト利用率
10代の利用率 | 20代の利用率 | |
---|---|---|
YouTube | 97.2% | 97.7% |
TikTok | 62.4% | 46.5% |
参考:令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書
Z世代の動画共有サイトの利用率はYouTubeがほぼ100%で最も多くなっています(参考:情報通信政策研究所『令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書』)。同様に動画共有で人気の「TikTok」は10代では6割近くが利用し、20代は4割強が使っている結果となりました。Z世代の中でも10代を中心に利用されており、平均すると約半数が使っている計算です。
【テレビの視聴率】テレビを視聴するZ世代は50%以上
Z世代のTV視聴割合(行為者率)
10代 | 20代 | |
---|---|---|
総務省調べ | 平日:59.9% 休日:54.9% |
平日:65.7% 休日:64.3% |
NHK調べ | 平日:51.5% | 平日:51% |
参考:令和3年度版 情報通信白書
参考:国民生活時間調査2020
ここまではメディアの中でもZ世代に親しみのあるSNSを中心としたデータについて紹介しましたが、旧来メディアであるテレビの利用状況はどうなっているのでしょうか?
こちらは2つの異なるデータからZ世代の利用状況をお伝えします(※数値の行為者率とは、15分以上続けて行動を取る人(ここではテレビを視聴している人)を表しています)。
総務省『令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書』とNHK放送文化研究所による『国民生活時間調査2020』の集計を見ると、トータルで50%以上のZ世代がまだテレビを視聴しているという結果が判明しています。2つの統計それぞれで数値には少し違いが出ているものの、Z世代でも半数以上の人がテレビを視聴していることになります。
一方で総務省のデータ、NHKのデータ双方において20代以下、若年層ほどインターネット利用の平均は増加傾向にあり、テレビの視聴時間を上回ります。
【新聞・ラジオ】利用者は10%未満と少数派
Z世代の新聞・ラジオ利用割合(行為者率)
10代 | 20代 | |
---|---|---|
新聞 | 平日:2.5% 休日:1.4% |
平日:6.3% 休日:6.6% |
ラジオ | 平日:1.8% 休日:0% |
平日:3.1% 休日:2.3% |
Z世代の新聞利用者は10%未満、ラジオ利用者は5%未満と、新聞とラジオの利用者は非常に少なくなっています(参考:情報通信政策研究所『令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書』)。
データを見る限り、Z世代を含む10~20代の利用者はほとんどいないのが現状です。ちなみに、新聞利用者は50、60代を中心に年代が上がるにつれ行為者率が上昇しています。
【まとめ】次の消費の主役を理解して効率的なマーケティングを!
Z世代の特徴、人気のメディアやSNSについてデータを使って解説しました。
SNSネイティブであるZ世代は、コト消費やリアルな体験を重視し、多様性を受け入れるなど独自の価値観を持っています。少し前のミレニアム世代を含む従来の世代とは大きく異なる傾向にあります。またZ世代が活用するSNSを駆使した多方向的な戦略が求められます。
今後の日本の労働力となり、消費の主役となるZ世代を知ることは事業の成長や効率的なマーケティングにおいて不可欠です。Z世代が関心を向けるベクトルや消費行動を追い、理解を深めていきましょう。
監修者谷口 翔太リンヤ株式会社 代表取締役
2007年「リンヤ株式会社」を創業。WEBマーケティング歴16年。草創期より一貫してWEBマーケティング の専門家として、多くの企業の収益向上に貢献。これまでに手がけた企業は2902社。豊富な経験を活かし、SEO対策を中心とした効果的なWEB施策により集客最大化を図る。HP制作から運用まで顧客企業をトータルでサポートしている。