
AISEPAM(アイセパム)とは消費者が商品を認知し、購買に至るまでのプロセスを示す消費者行動モデルの1つです。従来モデルの代表格であるAIDMA(アイドマ)の派生モデルでありながら、AIDMAとは異なる特徴を持ち合わせています。
AISEPAMはどのようなシーンで活用されるのでしょうか。本記事ではAISEPAMの使い方、またメリットとデメリットをご紹介します。関連する消費者行動モデルも解説しますので、マーケティングの参考にご活用ください。
目次
AISEPAMモデルとは?使い方と特徴・構成要素を解説

構成要素 |
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用途・特徴 | SNSとの親和性が低い商材、特に、住宅(不動産)といった、個人情報が多く含まれる(関わる)商材や購買に親族等の関係者の許可が必要な商材の購買行動を表している。 |
使える商材の例 | 住宅 投資用物件 金融商品(投資信託・定期預金など) 医療関連(病院など) 就職・転職 |
読み方 | アイセパム |
派生元 | AIDMA AIDA AISAS |
派生先 | なし |
提唱者 | 不明 |
提唱時期 | 不明 |
AISEPAM(アイセパム)は、個人情報が多く含まれており、SNSでの拡散が行われにくい商材に適している消費者行動モデルです。Attention(認知)、Interest(関心)、Search(検索)、 Examination(検討)、Permission(許可)、Action(購買)、Monopoly(専有)から成り立っています。
基本的な消費者行動モデルであるAIDMA(アイドマ)やAIDA(アイダ)の派生形であり、インターネット検索の影響下にあるAISAS(アイサス)やAISCEAS(アイシーズ)に関連しています。
AISEPAMは、許可 (Permission)が必要な場合や親族など利害関係者やスポンサーがいるケースで使われます。例を挙げると、学費を出す(スポンサーとなる)親が意思決定に関わる学生の進路決定、個人情報が多く含まれ、家族全体が意思決定に関わる不動産購入などです。
Attention(認知)=消費者が商品を認知する【認知段階】
AISEPAMの1段階目であるAttention(注意=認知)は、消費者が商品、サービスを認知するステップです。想定されている認知の手段は、広告や検索、AmazonなどECサイトでの検索、SNS、ネットや新聞、テレビの記事や番組など様々で、「ネットを通じた手段のみ」といった制限はありません。
この段階では、自社の商品やサービスを知らない消費者に自社の商品やブランドを知ってもらうこと(=認知拡大)が大切になります。
現代の消費者は、テレビCMや交通広告などで受動的に情報を受け取っている一方で、何らかの課題を解決しようとして検索するといった能動的な情報収集を行っています。よって、広告による認知拡大だけでなく、コンテンツマーケティングといった能動的な消費者に対応した情報提供活動も大切です。
様々な手段を駆使して消費者との接点を持ちましょう。
Interest(関心)=そのジャンルの商品に興味関心を持つ【認知段階】
AISEPAMの2段階目であるInterest(関心)は、商品やサービスを認知済みの消費者に興味関心を抱いてもらう段階を表します(1段階目のAttention(注意=認知)を経ても、必ずしも商品・サービスのInterest(関心)に変わるとは限らない点に注意してください。
商品やサービスに興味を持つ消費者は見込み客と言えるでしょう。その見込み客により能動的に、情報収集をしてもらえなければ真の「関心」とは言えません。自ら動いてもらえるよう、企業側から働きかけることが重要です。
1段階目のAttentionと同じく、広告やメディア露出などを行い、自社商品、サービスを通して独自性や魅力を伝えていく必要があります。商品購入より認知拡大を目的とした広告活動がより適していると言えるのです。
Search(検索)=商材やブランドを調べる【感情段階】
AISEPAMの3段階目であるSearch(検索)は、商品やサービスに興味を持ったユーザーが情報収集を開始する段階にあたります。
Search(検索)は、派生元のAISASと同様、web検索やSNSでの情報収集、比較サイトやECサイトといったネット上での情報収集を想定しています。ネット上でこの段階の消費者と接点を持つことを考えた場合、SEO対策(コンテンツマーケティング)やサイテーション(第三者のブログ等での言及や引用)の持つ影響力が大きくなるため、これらの教科が大切です。
また、商材によってはウインドーショッピングのようなリアルでの情報収集が適する場合もあるため、実際に使用する場合は店舗といったリアルでの情報収集も想定しておきましょう。
Search(検索)では、自社商品と同ジャンルの商品はもちろん、課題を解決できる別の商品ジャンルとも比較されることを考慮しなければなりません。例えばドリルを買いに来た人は、穴を開ける手段としてドリルを求めているのです。穴が空けばドリル以外の選択肢を選ぶ可能性は十分にありえます。同じ課題を解決できる他のジャンルの商品と比べた際の優位性も想定した訴求を行うようにしましょう。
Examination(検討)=購入の是非や競合との比較検討を行う【感情段階】
AISEPAMの4段階目であるExamination(検討)は、自社商品と競合するさまざまな商品をユーザーが比較検討する段階です。商品を本当に購入するかどうかを決定する重要なステップでもあります。
Examination(検討)では、1つ前に挙げた「Search」と同じく、WEB検索やSNS、比較サイトやECサイト、メディアやブログのレビューなどが情報源として想定されています。ただし、商材やサービスによってはリアルでの情報収集も行われますので、実務使用する際は両方を想定しておきましょう。
Examination(検討)で購入決定の要素となるのは価格だけではありません。ブランド力やスペックなども判断材料に含まれます。よって、他社商材との差別化や自社のブランディング、好意的なレビューを増やすことなどが大切になってきます。自社と同じ商材を提供している企業だけでなく、自社商材に代わる手段を提供する企業も競合相手と想定して訴求を行いましょう。
加えて、Examination(検討)で注意が必要な消費者行動が、ユーザーが購買意欲を無くしたり、商材の存在そのものを忘れてしまったりする状態です。
「AIDMA」における「Memory(記憶)」のように、「思い出してもらうための施策」も必要になりますので、リターゲティング広告などを用いることも検討しましょう。
Permission(許可)=家族や親族等の許可を得る【行動段階】
AISEPAMの5段階目であるPermission(許可)は、主に商材の購買に影響を受ける関係者の許可を得るステップにあたります。例えば学生の進学なら、両親の許可が必要になります。また不動産購入や金融商品においても配偶者や子ども、親などの家族から認めてもらわなくてはなりません。
Permission(許可)では、許可する人物が意思決定者に加わる可能性もあり、1つ前の「Examination(検討)」に逆戻りするケースも考えられます。また、BtoBの商材では、Permission(許可)が意思決定者の許可に当てはまります。そのため意思決定者を説得する施策や対策が欠かせません。
いずれの商材でも関係者にも購買意欲を持ってもらう必要があるため、見込み客だけでなく関係者も説得できるような訴求を考えることが大切です。
Action(購買)=実際に商品を購入・契約する【行動段階】
AISEPAMの6段階目であるAciton(購買)は、消費者が商品の購入や契約を行う段階です。
消費者は「商品を購入しようとしている」だけでなく、「購入のきっかけをつかめていない」「購入の決断ができていない」のいずれかの状態にあるのが特徴です。
これは他の消費者行動モデルの「Action」とも共通しています。
この段階で取れる行動として、きっかけをつかめていない顧客のフォローアップがあげられます。具体的なフォローアップの手段としては、再訪問や商品購入を促すリターゲティング広告を含む広告配信、ローカルビジネスであればチラシや看板などのオフラインの広告手段などが考えられるでしょう。
他に考えられる行動は、機会損失の削減です。例えば、物販のビジネスであれば在庫管理の徹底による在庫切れの防止が機会損失の削減に役立ちます。 また、UX・UIの改善も効果的です。オンラインのビジネスであれば問い合わせフォームの入力を簡潔化するなどの購入ハードルを下げる対策や、ネットであればサーバーの強化によるサーバーダウン回避などの施策が挙げられます。リアルのビジネスであれば混雑を減らすためのレジ増設などが考えられます。
UX・UIの改善はユーザーの声を集めて改善点を探し出すのが有効です。電話や問い合わせフォームだけでなく、SNSでも問い合わせを受け付けたり、ネット上の口コミを確認したりして改善点を探していきましょう。
Monopoly(専有)=情報の共有は行わない
AISEPAMの7段階目であるMonopoly(専有)は、SNSでの共有が行われないことを意味します。派生元のAISASとは異なり、AISEPAMに適する商材ではシェアしない=「専有」が重要になるためです。
ただし、個人情報が多く含まれる商材でも共有されるものもあります。例えばダイエットは個人情報を多く含む商材であるといえますが、痩せるために脂肪吸引といった手術を受けたことをネットに挙げるケースは散見されます。また、金融商品では、保有株の株価が上がったことをシェアしたりするような場合です。このようなケースではMonopoly(専有)をShare(共有)に変えて消費者行動を考える必要がありますので、自社商材では消費者がどのような動きをするかよく考えることが大切です。
【事例】AISEPAMの活用方法を具体例で解説
弊社の社員が進学する大学(経営学部)を決めた経験を例に、AISEPAMが実際の消費行動にどのようにつながるのかご紹介します。
- Attention(認知):インターネットと大学の情報誌を使い、自分が行ける学力レベルで関心があった経営学が学べる大学を探す
- Interest(関心):見つけた大学のホームページで経営学部があることと主要な授業の紹介を見て興味を持つ
- Search(検索):特に興味があったマーケティングを学べるかどうかを含め、その大学のカリキュラムをさらに調べる
- Examination(検討):同じ学力レベルで同じく経営学やマーケティングが学べる他大学の情報も収集し、受験する大学を選ぶ。
- Permission(許可):両親に相談し、受験と進学の許可を得る。
- Action(購買):実際に大学を受験し、合格したため進学を決める(=購買と同様の行動)。
- Monopoly(専有):プライベートな情報であるため、家族や親しい友人、高校の教員以外への情報共有や拡散は行わない。
今回は大学進学という、直接的な消費者(=子供・生徒)とお金を出す人物(=親)が異なる商材であったため、このような流れで購買に至りました。
AISEPAMのメリット・デメリット
インターネットを想定した消費者行動モデルでは、AISASに代表されるような「SNSの利用」が大前提でした。ところが「SNSの利用」が必ずしも適していない商材もあり、結果的にそれが取りこぼされていました。AISEPAMの活用により、SNSとの親和性が低い商材の分析が可能になったのです。
一方、個人情報を多く含んでいる商材であってもSNSでの共有を行う商材もあります。AISEPAMは商材に当てはめることができない点に注意しておきましょう。
AISEPAMに関連する消費者行動モデル
商材・サービスに適した消費者行動モデルを知り、適切な施策を講じることは自社のマーケティング戦略において大きな意味を持ちます。しかし消費者行動モデルによっては、内容がシンプルゆえに必要な部分をすべて拾えず、必要な要素が不足しがちです。
つまり、自社商材に完璧に合致する消費者行動モデルは存在し得ないのです。実際に消費者行動モデルを活用する場合には、各々の特徴を上手に取り入れ、多くのモデルを併用することが大切です。
そこで、AISEPAMに関連する消費者行動モデルをご紹介していきます。
AISAS|インターネット時代の基礎的な消費者行動モデル
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用途・特徴 | インターネット上での購買行動を解説した消費者行動モデル。検索や共有という、ネットの登場前には無かった行動が想定されている。 |
AISAS(アイサス)とは、「Attention(注意)」、「Interest(関心)」「Search(検索)」「Action(行動)」「Share(共有)」の頭文字からなる消費行動モデルです。2005年、インターネット時代の新しい消費行動モデルとして広告代理店の電通が提唱しました。
「検索」「共有」などユーザーが商品やブランドについて能動的に知ろうと行動するのが大きな特徴となっています。インターネットを使った集客やマーケティング全般に有効で、BtoCやBtoBどちらにも適した消費行動モデルとして知られています。
AISCEAS|比較検討を加えたAISASの強化版
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派生元 | AISAS |
用途・特徴 | インターネットを用いた消費者の購買行動を想定した消費者行動モデルで、比較検討を考慮したAISASの強化版。 |
AISCEAS(アイシーズ)とは、「Attention(注意)」「Interest(関心)」「Search(検索)」「 Comparison(比較)」「Examination(検討)」「Action(購買)」「Share(共有)」の7つの頭文字を取った消費者行動モデルになります。インターネット上での消費者行動という意味ではAISASに近く、さらに「比較」「検討」というプロセスが強化されているのが特徴です。望野和美氏(アンヴィコミュニケーションズ)が提唱し、知られるようになりました。
さまざまな商材に用いられますが、購買前に積極的に情報収集が行われる商材により適しています。ネット・リアルにかかわらず、消費者にとって関与が高い商品(=関心が高い商品)や高価な商品、BtoBの商品での活用が想定されます。
AIDCA|ダイレクトマーケティング特化型
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用途・特徴 | ダイレクトマーケティングや人的販売に特化したAIDA及びAIDMAの派生形。 |
AIDCA(アイドカ)とは、「Attention(注意)」「Interest(関心)」「Desire(欲求)」「Conviction(確信)」「Action(購買行動)」の5つで組み立てられる消費者行動モデルです。消費者行動モデルの代表格であるAIDMA(アイドマ)の4番目の段階「Memory(記憶)に変わり、「Conviction(確信)」が取り入れられています。消費者が購入を「記憶」する前に「確信」してしまう事を想定している点で、ダイレクトマーケティング用の消費者行動モデルに向いていると言われます。
AMTUL|継続的な購買行動を想定した消費者行動モデル
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用途・特徴 | 継続的な購買行動に主眼を置いた消費者行動モデルで、ロイヤルカスタマーの獲得やサブスクサービスの集客に適している。 |
AMTUL(アムツール)とは、Attention(認知)、Memory(記憶)、Trial(試用)、Usage(日常利用)、Loyality(固定利用)の頭文字で構成されている消費者行動モデルです。AMTULと従来モデルであるAIDMAやAIDAとの大きな違いは、商品やサービスを「継続して」購入するという考え方です。消費者の行動の移り変わりに着目し、1970年代に登場。商品やサービスに愛着を持つ「ファン」の存在、ロイヤルカスタマーの獲得が重要になる現代において、注目される消費行動モデルとも言えます。
BtoCとBtoBのどちらにも有効で、定期購入だけでなくサブスクでも当てはめることが可能です。
AIDMA|基本的な消費者行動モデル
構成要素 |
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派生元 | AIDA |
用途・特徴 | 様々な購買行動に当てはめられるシンプルな消費者行動モデル。 |
AIDMA(アイドマ)とは、1920年代にアメリカのサミュエル・ローランド・ホールが自身の著作で提唱した消費者行動モデルです。「Attention(注意)」、「Interest(関心)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(購買行動)」の頭文字から構成されています。AIDAと共に長きにわたり、代表的なモデルとして使われ続けてきました。
インターネット普及後はAIDMAから派生したさまざまな消費行動モデルが登場しています。現在も特に短期的なユーザーの消費行動を見るうえで、活用されています。