AIDAS(アイダス理論)とは消費者行動モデルのひとつです。消費を行う一連の経験や心理的過程を読み解く消費者行動モデルを知ることは、見込み客候補を含む顧客へのアプローチにも役立ちます。
本記事ではAIDASを実際の購買行動に当てはめて具体的に解説したうえで、マーケティングにおけるメリット、デメリットをお伝えします。また関連する消費者行動モデルについても紹介しますので、ぜひご活用ください。
目次
AIDAS理論とは?使い方と特徴・構成要素を解説
構成要素 |
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用途・特徴 | AIDAに「顧客満足(Satisfaction)」が加えられている。あらゆる商材に使える |
使える商材の例 | あらゆる商材 |
読み方 | アイダス |
派生元 | AIDA |
派生先 | なし |
提唱者 | 不明 |
提唱時期 | 不明 |
AIDAS理論とは、Attention(認知・注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Action(行動)、Satisfaction(顧客満足)の5つからなる消費者行動モデルの1つです。提唱時期と提唱者は不明ですが、従来の消費者行動モデルAIDA(アイダ)から派生した形だといわれています(※AIDAは最初期に提唱された、最も基本的な消費者行動モデルです)。
AIDASとAIDAはほぼ同じプロセスで構成されていますが、AIDAS理論は「顧客満足」の視点を含めている点でAIDAと異なっています。ここからは「Attention(認知・注意)」などの段階別にその詳細を詳しく解説していきます。
Attention(認知・注意)【認知段階】
消費者の状態 | 商品やサービス、そのブランドを知らない |
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企業の目標 | 自社の商品やブランドを認知してもらう |
アイダス理論の1段階目であるAttention(認知・注意)は、消費者が何らかの方法で商品やサービスを認知し、目を向けるステップです。AIDASが想定する認知を得るための手法は、ネット・リアルを問わず幅広いのも特徴です。具体的には広告をはじめ、自然検索、AmazonなどのECサイト経由の検索、SNS、ネットや新聞、テレビの記事や番組などを用います。
商品やサービスを購入・利用してもらうには、まず消費者に注目してもらう必要があります。自社の商品やサービスを知らない消費者に認知してもらうのがAttention段階でめざす目標といえるでしょう。
Attentionを獲得するのに最適なのは認知拡大手段です。具体的にはマス広告やネット広告、交通広告など広告全般とメディア取材をはじめとする企業の広報活動が該当します。何かの媒体で情報に触れたユーザーの検索を受け皿として、企業サイトも大きな役割を果たします。
自然検索やSNSでは、最初に何らかの課題を解決しようとして検索(ググる、タグる)するケースが多くあります。その後、課題を解決する手段として商品を認知するのです。そのためコンテンツマーケティングやSNSでは、課題から検索にたどり着いたユーザーを拾うことが大切です。
Interest(関心)【感情段階】
消費者の状態 | 商品やサービスを知っているが興味を持つまでには至っていない |
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企業の目標 | 商品やサービス、ブランドに興味を持ってもらう |
アイダス理論の2段階目であるInterest(関心)は、商品やサービスを認知した消費者に興味や関心を抱いてもらう段階にあたります。1段階目のAttention(注意=認知)が奏功し、商品を認知してもらっても「情報を収集したい」と思わせなければ意味がありません。Attention(注意=認知)がすぐにInterest(関心)へと向かわない点に注意が必要です。
企業側は、少しでも商品やサービスに興味を持っている消費者(見込み客候補)に、能動的に情報収集をしてもらうところをめざします。消費者に向けての働きかけとして、1段階目のAttentionと同様、商品購入より認知拡大を目的とした広告活動が適しているでしょう。
Desire(欲求)【感情段階】
消費者の状態 | 商品やサービスに興味を持っているが購買欲求を持つまでには至っていない |
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企業の目標 | 商品やサービスを欲しいと思ってもらう |
アイダス理論の3段階目であるDesire(欲求)は、自社の商品に関心を持っている見込み客に「買いたい」と思ってもらうフェーズです。消費者からすれば、商品への関心が高まってはいるものの、購入意欲を持つまでには至っていない状態にあたります。
企業はどのようにすれば、自社の商品、サービスを「買いたい」に結びつけられるのか知恵を絞る段階とも言えます。競合他社と比較して自社の商品やサービスを利用するメリットを強調し、優位性を明らかにすることが大切です。また自社の商品の魅力をよく知ってもらい、使用するシーンやライフスタイルの提案などを提示してニーズを喚起するよう注力します。2段階目の「Interest(関心)」と重なる部分でもあります。
ただし、顧客は自社の商品に興味を持っているものの、まだ欲しいと思うには至っていない点は同じです。ですから「Interest(関心)」「Desire(欲求)」ともに「いいな」という感情を「欲しい」に変える訴求が大きな意味を持ちます。
Action(行動)【行動段階】
消費者の状態 | 欲求は高まっているが購入に至っていない |
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企業の目標 | 購入という行動に移ってもらう |
アイダス理論の4段階目であるAction(行動)は、「買いたい」意思を実行に移す段階であり、実際に商品を購入するフェーズとなります。消費者は商品の購入を決めてすぐに手に入れられる状況を求めています。企業側は、購入を決めた消費者を取りこぼさないように配慮が必要です。ユーザーが「買いたい」と思っても入手に困難が生じれば、購入に結びつかないからです。
入手困難な代表例として、在庫切れが挙げられます。また、ECや通販の場合は、購入方法や決済方法が複雑でわかりにくい、入力や用紙への記入が面倒などの理由で顧客が購入をやめてしまう可能性も考えられます。このようなUX・UIに起因する離脱といった取りこぼしを防ぐためにも、ユーザー目線での導線にするべく工夫が必要です。離脱が多く見られる場合は導線の改善も検討すべきでしょう。
Satisfaction(顧客満足)【感情段階】
消費者の状態 | 購入した商品やサービスに満足している |
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企業の目標 | ファンやリピーターになってもらう 口コミやSNSでの拡散といった次の顧客の獲得に繋がる行動をとってもらう |
アイダス理論の最終段階であるSatisfaction(顧客満足)は、商品やサービス購入後の満足度を示すフェーズとなります。ユーザーとの関係は購入して終わりではありません。優良顧客との関係性を構築するために、リピーターや商品を広めるファンの獲得をめざしましょう。 アフターフォローの実施やサンクスメールの送信など、顧客のニーズをくんだきめ細やかな対応が求められます。
口コミの投稿やSNSでの拡散など、次の顧客の獲得につながる行動をとってもらうことが最終的なゴールとなります。
【事例】AIDASの活用方法を具体例で解説
AIDAS理論のメリット・デメリット
アイダス理論は、消費者が購買に至るまでのプロセスとして大きな意味を持っています。「顧客満足」に重きを置くのは、AIDASならではの視点です。AIDAやAIDMA、AISASなど、他の消費者行動モデルではこの視点は考慮されていません。
顧客の利便性や満足度を高め、ファンやリピーターの獲得ができれば自社の収益アップや成長に好影響を与えます。自社のブランディング強化にもつながり、安定的な経営に必要な要素です。アイダス理論はさまざまな商材に活用でき、顧客満足向上を図るうえでも重要な指標となり得るでしょう。
メリットが大きいAIDAS理論ですが、インターネットが普及した現代に必須の検索行動や比較検討が含まれていません。ただ、消費者行動モデルは自社商材の特性や市場の状況などに応じて複数の理論や手法を柔軟に使用するのが基本です。AIDASも他の消費行動モデルと組み合わせて用いれば問題なく、デメリットはないと言っていいでしょう。
AIDASに関連する消費者行動モデル【実務に必須】
ここからはAIDASに関連する消費者行動モデルについて詳しく解説していきます。消費者行動モデルには、異なる特徴や利点を持つ複数のモデルが存在します。理論とは異なり、実際の顧客行動は常に変化するためです。商材やサービスの内容や提供方法によって柔軟な対応が求められます。
実務では1つの消費者行動モデルにこだわるのではなく、複数のモデルを組み合わせたり、アレンジしたりすることが大切です。
AIDA【派生元】
構成要素 |
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派生元 | なし |
用途・特徴 | AIDASの派生元であり最初期に提唱された消費者行動モデル。非常にシンプルであるため他のモデルとの併用やアレンジは必要だが、ありとあらゆる商材の購買行動に当てはめられる。 |
AIDA (アイダ)はAIDASより前に提唱された消費者行動モデルです。AIDAは初期に提唱された消費行動モデルの基本として、さまざまな商材・シーンで活用されてきました。AIDAの影響が色濃いAIDASは、AIDAの派生モデルとも言われます。
Attention(注意) 、Interest(関心)、Desire(欲求)、Action(購買行動)の4つのステップからなり、広告を見てすぐに購買行動をとる場合に用いられています。提唱された時代背景からテレビやインターネットではなく新聞広告や屋外広告などを見て購入するケースが想定されています。短期間の消費者行動に適した消費行動モデルといえるでしょう。
AIDMA【ポピュラーな消費者行動モデル】
構成要素 |
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派生元 | AIDA |
用途・特徴 | 派生元のAIDAと同じく最も基本的な消費者行動モデル。個別のケースに応じた応用や他の消費者行動モデルとの併用は必要だが、ありとあらゆる商材の購買行動に当てはめられる。 |
AIDAと並び、消費行動モデルの基本として知られているのがAIDMA (アイドマ)です。 Attention(注意)、 Interest(関心)、Desire(欲求)、Memory(記憶) Action(購買行動)の頭文字からなる消費行動モデルです。最もシンプルな消費行動モデルだけに、幅広い商材・サービスで活用可能です。
ただ、カバーできる商材が広いため、各商材に100%当てはまるモデルとは言えません。 時代の移り変わりによる消費者行動の変化、商材の特徴などによりAIDMAだけでは説明が難しい要素があるからです。実務では他のモデルとの併用が求められます。
そもそも、AIDMAの提唱時にはインターネットはなく、実店舗の利用が想定されました。最も適しているのは、日用品のように実店舗での購買行動となります。
AMTUL【リピーター獲得を目的とした消費者行動モデル】
構成要素 |
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派生元 |
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用途・特徴 | 消費者が商品を継続的に購入する購買行動を表している消費者行動モデルで、リピーターやロイヤルカスタマーの獲得に使用できる。 サブスクリプションサービスの集客にも活用できる。 |
AMTUL(アムツール)とは、Attention(注意)、 Memory(記憶)、Trial(試用)、Usage(日常利用)、Loyality(固定利用)の5つのフェーズで構成された消費行動モデルを言います。長らく活用されてきたAIDAやAIDMAモデルを、リピーターやファンの獲得(=継続的な購買行動)の視点を入れて派生させているのが特徴です。
従来の消費行動モデルでは一回限りのプロセスのみ考慮されてきました。AMTULは継続利用が前提のサブスク商材のユーザー獲得にも適したモデルとなっています。
AISAS【インターネット時代の消費者行動モデル】
構成要素 |
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派生元 | AIDMA |
用途・特徴 | インターネット上での購買行動に主眼を置いた消費者行動モデル。ネット上では、検索や共有といった、AIDAやAIDMAの時代にはなかった行動が出てきたことから登場した。 |
AISAS(アイサス)は消費者行動をAttention(注意)、 Interest(関心) 、Search(検索)、 Action(行動)、 Share(共有) の5段階で示したモデルです。派生元であるAIDMAとの大きな違いは、インターネット上での購買行動を主軸とした消費者行動モデルであることでしょう。
検索や共有といった、ネット上での能動的な情報収集・情報発信にも注目している点がAISASの特徴です。
さまざまなインターネット上の消費者行動を表すモデルが登場する中、AISASは最も基本的な「ネット上のAIDMA」というべき存在として確立しています。
AISCEAS【AISASの強化版】
構成要素 |
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派生元 | AISAS |
用途・特徴 | AISASをさらに発展させ、ネット上で良く行われる類似商品や別の手段との比較や検討を織り込んだ消費者行動モデル。 現在のインターネット環境にはAISAS以上に適応しているといえる。 |
AISCEAS (アイシーズ)とは、AISASから派生形した消費者行動モデルになります。Attention(注意)、Interest(関心)、Search(検索)、Comparison(比較)、Examination(検討)、Action(購買)、Share(共有)の頭文字で構成されています。インターネット時代ならではの購買行動である比較や検討が加えられているのが大きな特徴です。
「ネット上のAIDMA」として知られるAISASと比較すると、AISCEASのほうが現状の消費者行動により当てはめやすくなっています。AIDASを使う商材とも無縁ではないため、積極的に活用することをおすすめします。