マーケティングにおいて重要となる物の1つに、カスタマージャーニーマップなどによる消費者の行動の推測・検証があります。
そして、このような消費者の理解に役立つのが、消費者が取る行動を概念化した消費行動モデルです。
この記事では、最も基本的な消費者行動モデルである「AIDA(アイダ)モデル」について、その意味や構成要素といった基本から、メリットやデメリット(利点と欠点)や実際の購買行動に当てはめた具体例を詳しく解説します。
また、AIDAが元となって生まれた、派生形の消費者行動モデルもご紹介します。
目次
AIDAモデルとは?使い方と特徴・構成要素を解説
- Attention(注意)
- Interest(興味)
- Desire(欲求)
- Action(購買行動)
AIDA(アイダ)とは、1920年代のアメリカにて、広告・セールスのパイオニアと言われる、セント・エルモ・ルイス提唱されたマーケティング理論です。
数ある消費者行動モデルの中で最も古いモデルであり、最も基本的な消費行動モデル(購買モデル・態度変容モデル)として、消費者の行動を把握する際に広く活用されています。
ちなみに、日本ではAIDAの派生形であるAIDMAの方が知名度が高いですが、アメリカではAIDAの方が使用されることが多いです。
AIDAでは、消費者がどんな心理過程や行動を経て商品やサービスの購入に至るかを「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Desire(欲求)」「Action(購買行動)」の4つのフェーズに分けて説明しています。提唱されたのが1920年代であることから、テレビやインターネットの存在は想定されておらず、情報源として想定されているのは新聞広告や屋外広告です。
したがって、消費者が広告を目にする回数は1回~数回程度と少なく、他社商品とじっくりと比較検討することもない、短期間での購買行動を前提に考えられています。この点は、後で紹介するAIDAの派生形「AIDMA(アイドマ)」との相違点でもあります。
ここからは、AIDAを構成する4つの要素を「認知段階(商品を認知するフェーズ)」「感情段階(商品について知り、検討するフェーズ)」「行動段階(商品を購買するフェーズ)」の3つの大枠に分類するとともに、それぞれ詳しく掘り下げていきます。
Attention(注意)=消費者が(主に広告で)商品を認知する【認知段階】
AIDAの1段階目として、消費者が主に広告によって商品を認知する「Attention(注意)」のフェーズがあります。
自社の商品やサービスのことを知らない消費者に対しては、まずは知ってもらうことが大切です。
AIDAの理論上は認知を獲得する手段として新聞広告や屋外広告が念頭に置かれていますが、現代ではテレビCMや新聞広告などのマス広告、インターネット広告、メディアでの紹介など様々なチャネルが想定されますので、実務で使用する際はこれらの手段も考慮してください。
なお、認知のステップを経ても、すぐに次の「Interest(興味)」に移行するとは限りません。消費者に興味関心を持ってもらうために広告の内容を工夫するとともに、あらゆる広告媒体を駆使して消費者の関心を引く事を考えましょう。
Interest(興味)=広告を見て商品に興味を持つ【認知段階】
AIDAの2段階目は、広告によって消費者に商品への興味関心を深めてもらう「Interest(興味)」のフェーズです。
この段階の消費者は自社の商品やサービスを知っていますが、まだ興味を持つまでには至っていません。ここでは、消費者の関心を引く事を目的として、商品やサービスを使うメリットや、競合製品と比較した場合の自社製品の優位性などを伝えていきます。
具体的な方法としては、広告やSNSなどによって商品を使うシーンを見せたり、商品のメリットを紹介したり、使い方の提案をしたりすることが考えられます。
ただし、モノがあふれている現代では、「商品やサービスを売り込む」という形では消費者に興味を持ってもらえないことも多くありますので、消費者が何を求めているかを的確に捉えて、商品やサービスを利用することで課題が解決できることをアピールすることが大切といえます。
たとえば、洗濯物を部屋干ししたときの臭いが気になるユーザーに、部屋干しをしても臭わない効果がある洗剤を紹介するといった形です。
Desire(欲求)=商品の購買意欲が高まる【感情段階】
AIDAの3段階目である「Desire(欲求)」は、消費者に商品やサービスを「欲しい」「利用したい」と思ってもらうフェーズです。
この段階の消費者は自社の商品やサービスの購入を検討しており、その使い道やメリットも知っています。すでに関心が高まっている段階なので、ここで消費者に「欲しい」と思わせて、購入行動に移させるにはどうしたらいいかを考えなければなりません。
消費者に最後の一押しをする方法としては、消費者が購入することによるメリットをさらに訴求したり他社と比較した自社の優位性をアピールして購買意欲を高める方法や、セールや限定キャンペーンなどを行って価格面で訴求する方法などが考えられます。
この時点の消費者はまだ購入を決めていないため、消費者が買わない理由を潰しつつ、ニーズを喚起することが大切です。
Action(購買行動)=実際に商品を購入・契約する【行動段階】
AIDAの最終段階である4段階目は、消費者が商品やサービスを購入するフェーズです。消費者の購買意欲は高まっており、来店して商品を見たり、ECサイトにアクセスしたりして、購入を検討しています。
顧客の獲得という目標はすでに達成しているため、ここで新たに消費者に働きかけることはありません。一方で、商品と価格に起因する原因以外で購入を取りやめられる、消費者の離脱を防ぐ対策が必要になります。
- 商品を買える場所がわからない:広告で取扱店舗を告知する。ホームページやSNSの目立つ場所に掲載する
- 商品が売り切れている:需給の迅速な把握と生産体制の構築。ECなどでの入荷通知や予約販売の実施など。
- 対応している決済方法が不明:ECや通信販売に多いケース。ホームページのわかりやすい場所に明記する。
また、実務においては、リピーターを獲得するための戦略を考える、口コミによる新規顧客獲得の方法を考えるといった、他にもやるべきことが多くあります。
このような戦略作りには、後ほど紹介するAIDAの派生形の消費者行動モデルが役立ちます。
【事例】AIDAの活用方法を具体例で解説
今回は、弊社の社員が椅子に敷くハニカム構造のゲルクッションを購入した経験を例に、具体的な購買行動にAIDAがどのように当てはまるのかを解説していきます。
- Attention(注意):別の買い物で行ったドン・キホーテで、ゲルクッションの広告を見る
- Interest(興味):卵を踏んでもつぶれないという弾力性の高さの訴求に注目。自宅の座面が固い椅子に敷く座布団を探していたので興味を持つ。
- Desire(欲求):ハニカム構造による通気性の良さや、ホコリが溜まらないようにカバーがついていることを知り、さらに購買意欲がアップ。
- Action(購買行動):十分に買える値段だったのでそのまま購入
今回はこのような流れで購入に至りました。
今でも使える?AIDAのメリット・デメリット
AIDAは時代を超えて現在も活用されている素晴らしい消費行動モデルですが、1920年代に提唱されたかなり古いものであるのため、「現代に通用するのだろうか?」という不安や疑問を持つ人も少なく無いのではないでしょうか?
しかし、結論から言えば、AIDAの考え方自体は現代でも通用します。「A」「I」「D」「A」の4段階の構成要素の意味を理解し、自社のケースに当てはめて応用できれば、十分に活用することができるでしょう。
ただし、広告の種類が屋外広告と新聞広告ぐらいしかない時代の消費者行動モデルなので、実務の観点から見ると、現代の市場や社会の環境には当てはまらない部分もあります。
これはマーケティングの研究者や実務家も課題としてとらえており、AIDAの派生形となる消費者行動モデルが多数生み出されました。
派生形を使う上でもAIDAの構成要素や内容は知っておくべきですが、派生形の消費者行動モデルを使用することで、より現代の市場環境に即した分析を行うことができます。次項では、AIDAの4つの派生形をご紹介します。
知っておきたいAIDAの4つの派生形
- AIDMA:中長期的な購買行動を想定したAIDAの派生形
- AIDCA:ダイレクトマーケティング用の消費者行動モデル
- AMTUL:継続購入を想定した消費者行動モデル
- AISAS:インターネット上での消費者行動モデル
AIDAには、「AIDMA」「AIDCA」「AMTUL」「AISAS」という4つの派生形があります。それぞれ、個別の用途や時代の変化に合わせてAIDAを改良したものなので、実用性としてはこれらの派生形のほうが高いといえるでしょう。
【派生形1】AIDMA:中長期的な集客と複数回の広告閲覧に対応したバージョン
- Attention(注意)
- Interest(興味)
- Desire(欲求)
- Memory(記憶)
- Action(購買行動)
日本でもよく知られている消費行動モデルである「AIDMA(アイドマ)」は、AIDAに「M(Memory=記憶)」が加わったバージョンです。
AIDAが提唱された時代と違い、テレビなどの普及によって商品やサービスの広告も繰り返し見られるようになったため、購入前に商品が記憶される事を想定してAIDMAが作られました。
AIDAが短期的な購買行動を想定しているのに対して、AIDMAは比較的中長期的な消費者行動を見据えています。
【派生形2】AIDCA:ダイレクトマーケティングと人的販売用の特化版
- Attention(注意)
- Interest(興味)
- Desire(欲求)
- Conviction(確信)
- Action(購買行動)
「AIDCA(アイドカ)」は、AIDAに「C(Conviction=確信)」が加わったバージョンです。
AIDMAが商品を覚えてもらう「記憶」をAIDAに加えたのに対して、AIDCAは「よし購入しよう」という確信に変わるフェーズを入れている点に特徴があります。
そのため、広告よりも詳しい情報を伝えることができ、サンプリングなどのダイレクトマーケティングや、店頭販売や実演販売などの人的販売に特化した消費行動モデルとなっています。
【派生形3】AMTUL:継続購入する顧客の獲得用のバージョン
- Awareness(認知)
- Memory(記憶)
- Trial(試用)
- Usage(日常利用)
- Loyality(固定利用)
AIDAやAIDMAが1回商品を購入する顧客を想定しているのに対し、継続購入する顧客の獲得を想定して1970年代に作られた「AMTUL(アムツール)」という消費行動モデルもあります。
AMTULの構成要素は「Awareness(認知)」「Memory(記憶)」「Trial(試用)」「Usage(日常利用)」「Loyality(固定利用)」の5段階で、日常利用や固定利用といったように購買後の行動が組み込まれている点が特徴です。
各段階において「再認知名率」「再生知名率」「使用経験率」「主使用率」「今後の購買意向率」という指標でマーケティング調査をするため、サブスクなどのサービスの集客にも活用できます。
【派生形4】AISAS:インターネット上での消費者行動モデルを表したバージョン(派生形多数)
- Attention(認知)
- Interest(関心)
- Search(検索)
- Action(行動)
- Share(共有)
インターネット上での消費者行動に特化した、「AISAS」というAIDA及びAIDMAの派生版もあります。
2004年に電通が提唱したもので、情報の検索と共有(SNSでの拡散など)を行うことを想定して、消費者が情報を見て自社の商材やブランドを知る「Attention(認知)」、消費者が興味関心を持つ「Interest(関心)」、商材やブランドを調べる「Search(検索)」、購買・契約する「Action(行動)」、SNSでの拡散や口コミなどを行う「Share(共有)」の5段階から構成されています。
AISASはインターネットを考慮した消費者行動モデルでは最も基本的な物となっており、情報の飽和やSNSの普及を考慮した「/web-media/dual-aisas”>Dual AISAS」、比較検討を考慮した「AISCEAS」、個人情報が多く含まれる商材に特化した「AISEPAM」など、さまざまな点を強化したAISASの派生版が生まれています。