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5A理論とは?ネット・リアル両対応の消費者行動モデルを徹底解説

2023年03月30日(木) 消費者行動モデル

消費者行動モデル(マーケティングモデル・購買行動モデル)は時代の流れとともに変化してきました。特に近年登場したインターネットやSNSの存在の影響は大きく、従来モデルのように「商品・サービスの購入」をゴールに定めるだけにとどまりません。

本記事で紹介する5A理論は、いかに顧客ロイヤリティを高め、購入者以外に広く勧めていくかに着目した新たなモデルです。SNS 時代の消費者行動モデルである5A理論の使い方やメリット、デメリットについて詳しく解説します。

目次

【基礎知識】コトラー提唱!5A理論に関わるマーケティング4.0とは

マーケティングの変遷
段階 キーワード
マーケティング1.0 製品主義
マーケティング2.0 顧客志向
マーケティング3.0 人間志向
マーケティング4.0 自己実現
マーケティング4.0の訴求の例
商材 訴求方法の例
SUV(車) 「アクティブな自分になりたいという欲求を満たせる」という方向性で訴求する
EV車 「新しいものを持っている先進的な自分」「環境に配慮している自分」になれるという方向性で訴求する
「かっこいい自分」や「かわいい自分になれる」という方向性で訴求する

マーケティングの概念を「顧客のニーズに応え、信頼を得て利益を上げること」だと称したのは、マーケティングの世界的権威で経営学者のフィリップ・コトラーです。コトラーは、「マーケティング」の軸となる部分は時代の変遷によって大きく変わってきていることも示しています。

現在のマーケティング4.0が浸透するまで、マーケティングは次のような変遷をたどってきました。起点となったのは、製品中心(生産者中心)であるマーケティング1.0です。20世紀はじめの第二次産業革命から大量生産・大量消費を経て、製品の機能や性能が訴求の中心となりました。ターゲットは、不特定多数の大衆です。

次のマーケティング2.0では、消費者にスポットを当てたマーケティングです。不特定多数の大衆にアプローチするのではなく、顧客が求めるものに焦点を当て他社との差別化を図るようになりました。製品のクオリティのみならず、「企業」の価値が大きな意味を持つようになったのがマーケティング3.0です。企業としてどのようなビジョンを持ち、社会貢献などを行っているのかに重きが置かれました。

マーケティング4.0は、インターネットやSNSが一般化したまさに今、「現代」に即した内容のカスタマージャーニーへと進化しています。大きな特徴は「自己実現」です。商品やサービスを使うことにより、いかに「なりたい自分になれるか」かが重要なポイントとして挙げられます。このマーケティング4.0において、ユーザーに訴求する消費者行動モデルが「5A理論」となります。

5A理論とは?使い方と特徴・構成要素を解説

5A理論の構成要素と仕組み

構成要素
  • 認知(AWARE)【認知段階】
  • 訴求(APPEAL)【感情段階】
  • 調査(ASK)【感情段階】
  • 行動(ACT)【行動段階】
  • 推奨(ADVOCATE)【行動段階】
用途・特徴 コトラーが提唱した消費者行動モデルで、構成はAISASと似ているが、理論上の調査(※検索等)と推奨(※共有行動)をインターネット上での行動に限定していないのが特徴。 あらゆる商材に活用できる。
使える商材の例 あらゆる商材
読み方 ファイブエーリロン
派生元 なし
派生先 なし
提唱者 フィリップ・コトラー
提唱時期 2016年

5A理論とは、認知(AWARE) 、訴求(APPEAL)、調査(ASK) 、行動(ACT)、推奨(ADVOCATE)の5つの頭文字で構成される消費行動モデルです。自己実現の「マーケティング4.0」を説いた、フィリップ・コトラーが2016年に提唱しています。コトラーは、オンライン化、デジタル化が進化を続ける中において実は「オフライン」との一体化こそが重視すべきポイントだと示しています。

これまで使われてきたAIDMA等の一般的な消費者行動モデルは、商品・サービスを認知し、行動(購買)に至るまで徐々に対象者が絞られていきます。だんだんと数が少なくなる漏斗(ファネル)で示されることがほとんどでした。企業など「売る側」からの一方通行の発信であったためです。

しかし、5A理論は漏斗型になっていません。これは、顧客側がネット上などで情報発信ができるようになり、購入していないユーザーであっても他の人に勧めるケースがあることなどが想定されているからです。5A理論は企業と顧客の双方向の消費者行動モデルであり、どの段階でも対象者が絞られることはないのが特徴です。

認知(AWARE)【認知段階】

5A理論の1段階目である「認知(AWARE)」は、何らかの方法で商品やサービス、ブランドを認知するステップです。自社商材・ブランドを知らない状態の消費者に認知してもらうためのアプローチを行います。ここではリアル・ネット・マスメディアなどあらゆる方法が認知獲得の手段(タッチポイント)となり得ます。

訴求(APPEAL)【感情段階】

5A理論の2段階目である「訴求(APPEAL)」は、自社の商材やブランドに興味を持ってもらう段階です。消費者は自社商材やブランドを知ってはいるものの、まだ関心を持つには至っていない状態ですので、売り手としては、自社の商材やブランドへの関心をさらに高める必要があります。

訴求(APPEAL)段階では、消費者が認知しているブランド、興味を持つ可能性があるブランドは1つではありません。自社以外の競合が選択肢にあることに注意が必要です。

調査(ASK)【感情段階】

5A理論の3段階目である「調査(ASK)」は、消費者が興味関心を持った商材やブランドについて調べる状態です。興味を持ったあらゆるブランドについて、比較検討を行いながら調査しているステップにあたります。ここでの調査対象となるのは自社だけでなく、競合も含まれます。

調査(ASK)段階で購買意欲が生じれば、次の購買行動へと進みます。また購買に至らなくとも、最終ステップの「推奨」にあたる「他人に勧める」行動への移行も想定されます。

売り手側は、自社の商材やブランドのさらに詳しい情報を知ってもらうこと、競合と比べた場合のメリットやデメリットについても理解してもらう必要があります。結果、消費者の興味をさらに高めることにつながるからです。

自社商材やブランドの詳しい情報を発信しているコンテンツ(公式サイトや公式SNS)、口コミに代表される第三者からの評判、他社商材との比較記事などがタッチポイントとなります。

行動(ACT)【行動段階】

5A理論の4段階目である「行動(ACT)」は、消費者に商品やサービスを購入してもらう段階です。消費者は自社や競合の商材・ブランドについて詳しく知っているため、いかに購買につなげるかが目標となります。

行動(ACT)段階のタッチポイントは、実店舗かオンライン上となります。いかに消費者の背中を後押しするかが重要となりますので、販売促進施策や広告施策などに注力するとともに、欠品や公式サイトが使いにくいなどUX/UIの不備による機会損失の防止にも配慮しましょう。

また、この段階では次の「推奨(ADVOCATE)」へと結びつけるため、顧客満足を意識した施策が必要です。顧客の意見を取り入れて継続的な商品の改善に努めることも意識しましょう。

推奨(ADVOCATE)【行動段階】

5A理論の5段階目である「推奨(ADVOCATE)」は消費者が自社の商材やブランドを他人に勧める段階です。商材やブランドに対して愛着を持った消費者が、口コミやSNSなどを通じて他社に推奨を行います。

「推奨(ADVOCATE)」の段階に至るには、ブランドロイヤリティを育み、「ファン」となってもらう必要があります。ファンとなる消費者は必ずしも購買を伴うわけではありません。ただ購買行動がなくても商材やブランドを「ファン」として推奨する場合があるからです。

ファンの獲得は新たな顧客やリピーターの獲得につながり、経営の安定、ビジネスの成長にも大きく貢献します。

ブランドへの愛着を示すブランドロイヤリティは従来、再購入率などリピーター獲得を基準に測定されてきました。5A理論におけるブランドロイヤリティとは、商品やブランドを推奨する意思があるかどうかが指標となっています。

5A理論のメリット・デメリット

5A理論では、商品やサービスを認知している消費者が他者への推奨という形で広がりを見せます。対象となる消費者が絞られ「漏斗型」となる従来型のAISASなどと異なる点です。 加えてネット、リアルを問わずに調査(ASK)するという特徴を持っています。よりリアルな行動・状況を再現、想定できるため、実際の消費者行動に近づけるメリットがあります。

一方で現代社会の状況に合わせるなら、従来型のAISASなども理論とは異なった使い方が可能です。理論上では漏斗型となるAISASであっても、実務ではさまざまに応用できるためです。5A理論との差異はそれほど大きくないと言えるでしょう。

5A理論にデメリットはないものの、商材に応じて他の消費者行動モデルを組み合わせるのがおすすめです。5A理論を単独で用いた場合より、さらに詳しく消費者行動の分析ができるようになります。例えばSNSでの消費者行動をより深く分析するためにはDual AISASが役立ちます。5A理論にプラスする消費者行動モデルについて、この後詳しく説明します。

【実務に必須】関連する消費者行動モデル6選

5A理論はSNSや口コミサイトなどを含めた「他者」とのつながりにフォーカスした消費行動モデルです。現代社会に即したリアルな形態とも言えるでしょう。しかし商材やサービスによる違いなど実務ではさまざまな状況が想定されます。異なる特徴や利点を持つ複数のモデルを組み合わせ、アレンジして活用することが大切です。そこで5A理論に合わせて活用できる消費者行動モデルについて詳しくご紹介します。

AIDMA|基本的な消費者行動モデル

AIDMAモデルの構成要素と仕組み

構成要素
  • Attention(注意)【認知段階】
  • Interest(関心)【感情段階】
  • Desire(欲求)【感情段階】
  • Memory(記憶)【感情段階】
  • Action(購買行動)【行動段階】
派生元 AIDA
用途・特徴 派生元のAIDAと同じく最も基本的な消費者行動モデルで、商品を覚えているが購買意欲を無くしている状況が想定されているのが特徴。
個別のケースに応じた応用や他の消費者行動モデルとの併用は必要だが、ありとあらゆる商材の購買行動に当てはめられる。

AIDMAは、Attention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(購買行動)の5つの頭文字からなる消費行動モデルです。派生元のAIDAと共に最も基本的な消費者行動モデルとして知られています。幅広い商材で活用でき、この後にふれるさまざまな消費者行動モデルの派生元にもなっています。

AISAS|ネット上での購買行動を表した消費者行動モデル

AISASの構成要素と仕組み

構成要素
  • Attention(注意)【認知段階】
  • Interest(関心)【感情段階】
  • Search(検索)【感情段階】
  • Action(行動)【行動段階】
  • Share(共有)【行動段階】
派生元 AIDMA
用途・特徴 インターネット上での購買行動に主眼を置いた消費者行動モデル。ネット上では、検索や共有といった、AIDAやAIDMAの時代にはなかった行動が出てきたことから登場した。

AIDMAから派生したAISAS は、Attention(注意)、Interest(関心)、Search(検索)、Action(行動)、Share(共有)のプロセスを経る消費行動モデルです。5A理論と同じく、情報収集などの際にインターネット活用が想定される購買行動モデルでもあります。AISCEASやDual AISASは、AISASから派生して生まれました。

AISCEAS|比較検討を考慮したAISASの改良版

AISCEASの構成要素と仕組み

構成要素
  • Attention(注意)【認知段階】
  • Interest(関心)【認知段階】
  • Search(検索)【感情段階】
  • Comparison(比較)【感情段階】
  • Examination(検討)【感情段階】
  • Action(購買)【行動段階】
  • Share(共有)【行動段階】
派生元 AISAS
用途・特徴 AISASをさらに発展させ、ネット上で良く行われる類似商品や別の手段との比較や検討を織り込んだ消費者行動モデル。
現在のインターネット環境にはAISAS以上に適応しているといえる。

AISCEAS はAISASの派生した消費行動モデルです。インターネット時代の定番となった比較や検討などの購買行動が組み込まれています。Attention(注意)、Interest(関心)、Search(検索)、Comparison(比較)、Examination(検討)、Action(購買)、Share(共有)の6つのステップの頭文字を取って呼ばれています。AISAS以上に現代の消費者行動に即した消費行動モデルがAISCEAS だと言えるでしょう。

Dual AISAS|SNSの影響力を追加したAISASの改良版

Dual AISASの構成要素と仕組み

構成要素 縦軸
(購買行動)
  • A:Attention(注意)【認知段階】
  • I:Interest(購入への興味・関心)【感情段階】
  • S:Search(検索)【感情段階】
  • A:Action(行動)【行動段階】
  • S:Share(共有)【行動段階】
横軸(SNS)
  • A:Activate(活性化)
  • I:Interest(拡散への興味・関心)
  • S:Share(共有)
  • A:Accept(拡散された情報の受容・共鳴)
  • S:Spread(受容した情報の拡散)
派生元 AISAS
用途・特徴 インターネット上の情報の飽和とSNSの台頭による消費者行動の変化に対応するために生み出されたAISASの改良版。

AISASから派生したDual AISASは、縦軸と横軸2つの要素で構成される消費行動モデルです。SNSが普及した時代の2種類の消費者の要素がリンクしているのが大きな特徴です。縦軸が「買いたい」と思う心理を持つ「購買関心層」、横軸がSNSを通じて「拡散したい、コミュニケーションを楽しみたい」と考える「コミュニケーション関心層」となっています。

縦軸は従来のAISASの要素であるAttention(注意)、Interest(購入への興味・関心)、Search(検索)、Action(行動)、Share(共有)からなり、横軸はActivate(活性化)、Interest(拡散への興味・関心)、Share(共有)、Accept(拡散された情報の受容・共鳴)、Spread(受容した情報の拡散)としてそれぞれの「A」を基点としループ状に縦軸を囲んでいる形です。

AISAS等の他の消費者行動モデルでは、購買関心層だけを想定して組み立てられていました。SNSが普及した現代の購買行動では説明できない・適していない傾向が目立つようになったのです。AISAS等にはないインターネット上の情報やSNSの台頭を考慮し、Dual AISAS が生まれました。

AMTUL|リピーターやファン獲得に適した消費者行動モデル

AMTULの構成要素と仕組み

構成要素
  • Awareness(認知)【認知段階】
  • Memory(記憶)【検討段階】
  • Trial(試用)【行動段階】
  • Usage(日常利用)【行動段階】
  • Loyality(固定利用)【行動段階】
派生元
  • AIDA
  • AIDMA
用途・特徴 継続的な購買行動を想定した消費者行動モデル。
リピーターの獲得やサブスクリプション商材の集客、ロイヤルカスタマー(ファン)の獲得を考えるうえで活用できる。

AMTULは、Awareness(認知)、Memory(記憶)、Trial(試用)、Usage(日常利用)、Loyality(固定利用)の5プロセスで構成される消費行動モデルです。同じ商品や同じブランドの商品を繰り返し購買する「継続的な購買行動」を想定して作られました。リピーターやファン(ロイヤルカスタマー)、サブスク商材の顧客などの獲得での活用に適しています。

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